内容説明
1961年制定の「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」は,未曾有の破局的事故に対して無力だった.本書は3.11以前の損害賠償制度の実体を示し,その不備をどのように乗り越えて現行の損害賠償スキームは短時間に構築されたのか,東京電力はなぜ破綻せず「国有化」されたのか,政策担当者への聞き取りに基づき明らかにする.
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目次
序章 なぜ政府は新立法を必要としたか
第Ⅰ部 「原子力損害の賠償に関する法律」における国家の責任
第1章 原子力事業者の厳格責任と国家関与の曖昧
第2章 原賠法「不変」の構図
第3章 チッソ金融支援方式と支援機構スキームの共通性
第Ⅱ部 原子力損害賠償支援の政策学
第4章 東京電力破綻回避の真実
第5章 原子力損害賠償支援機構を設立した政府の意図
第6章 過酷事故の教訓と原賠法,支援機構法改正の論点
第Ⅲ部 賠償・除染・廃炉――東京電力国有化の論理
第7章 預金保険制度の支援機構スキームへの転用
第8章 政府による支援機構スキームの実践
第9章 東京電力分割構想と電力自由化の整合性
終章 原子力損害賠償制度の二層化の必然
あとがき
〔資料〕原子力損害の賠償に関する法律
参考文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
22
メディアも、そして国民も、本質的な問題よりも、わかりやすいドラマを求めてしまう傾向にある。福島第一原発事故において、政治家VS東電といった対立的構図に、どうしても目を奪われてしまったように。本書は、そんなわかりやすいドラマではなく、肝心要の問題と真正面から向き合い、その検証から未来への提言を行っている。それは、原子力損害賠償制度についてだ。著者の遠藤典子は、賠償法の誕生の経緯から、福島原発事故を受けて構築された賠償制度のしくみとその成立過程を、当事者達のインタビューなどから、詳細に検証していく。(つづく)2015/01/08
Moloko
2
公害とチッソ救済、及びに預金保険機構設立等の過去の政策プログラムを転用し、行政の裁量を広く設定したがる行政の心理(長期政権が続いて政策決定の安定性が高い日本の特徴だと思うが)などの行政学の知見を抑えつつ、日本の原子力の損害賠償制度がなぜ国際標準と違って曖昧な制度に仕立てられ、なぜ福島の事故後の早期に追加の賠償スキームを政府が打ち出し、なぜそのスキームの構造となったかを文献やインタビューできっちり検証したもの。本書では財政民主主義の論理や電力自由化や政策担当者の政治(ポピュリズム)不信などが指摘されていた2017/05/29
すのす
2
原子力損害賠償補償法の制定時の議論から、水俣病におけるチッソ支援スキーム(患者県債方式)や預金保険機構の支援スキームの拡充にも触れながら、東日本大震災後、東電への損害賠償等々をどのように構築したか、そのとき政府はどう考えたか、を、当事者へのインタビューももとに書いた本。原発事故の複合的被害に対して、どのように考えて対策を講じたかという観点からの行政学的なケーススタディとして、非常に読み応えがあった。役人の行動原理がよくわかる。また、多岐にわたる論点が、次のトピックへの興味を刺激してくれた。2016/03/08
O. M.
1
福島原発事故の事例検討を通して、日本の行政の政策的特質を検討した力作です。3部構成となっており、(1)原賠法の成立過程とその欠陥、(2)事故直後の機構法成立に至る経緯、(3)今後の展望、が論じられます。今更ながら「こういう経緯・政策意図だったのか」と気付かされる点が多々あり、勉強になりました。結論として、日本政府は、福島原発事故のような大規模事故に対して、過去も今後も、絶対に自己の責任を認めないこと。曖昧な日本の法制度は、(政治家ではなく)優秀な官僚の運用で支えられていること、が分かりました。2017/01/03
Emkay
1
原発の大事故が起こった場合の賠償制度の解説から話が始まる。賠償に対する政府の姿勢の曖昧さを随所で指摘。また、管、野田政権下で行われた支援機構法成立までのプロセスという、比較的最近の事象を、豊富なヒアリングを基に分析している。さらに、電力会社の分割論、責任論、会社更生法の適用といった、未決着な話題にも視点を与えてくれる。また、政府と原子力事業者の関係が、当初のもくろみとは別に「インナーサークル化」したとの指摘は、枝葉かもしれないが非常に重要だと思う。2013/12/22




