岩波新書<br> 日本の建築

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岩波新書
日本の建築

  • 著者名:隈研吾
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  • 岩波書店(2023/12発売)
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  • ISBN:9784004319955

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内容説明

西欧の建築に日本が出会って約一五〇年,建築家たちは日本建築をどう捉え,どう表現してきたのだろうか.たびたび災害に見舞われる日本で,たとえば村野藤吾をはじめとする建築家は「弱さ」や「小ささ」を大切にしながら,モダニズムとは異なる道を歩んだ.その精神を受け継ぎ著者は次へと歩を進める.日本建築の本質と未来.

目次

はじめに──死体ではなくナマモノとして
Ⅰ 日本という矛盾──構築性と環境性
はじまりの木箱
タウトvs.フォルマリズム
桂離宮という「奇跡」
桂離宮、伊勢神宮vs.日光東照宮
伊東忠太の反逆
西欧の二項対立
日本と西欧の距離と反撃
日本のサヴォア邸
丹下健三「大東亜建設記念営造計画設計競技」一等案
丹下の矛盾と伊勢神宮の両義性
レヴィ ストロースの着眼点
Ⅱ 革命と折衷──ライト、藤井厚二、堀口捨己
ライトによる転倒
浮世絵と庇との遭遇
ヴァスムート・ポートフォリオと巨匠たちの遭遇
ベーレンスによる脱色
建築の二〇世紀──「自由」な建築
六人の「折衷」建築家
藤井厚二──曖昧さとエンジニアリング
聴竹居──コルビュジエへの挑戦
小さなエンジニアリング
木という特別な物質
堀口捨己──早すぎた分離派建築会
オランダとの出会いと紫烟荘
物質としての建築論と茶室との遭遇
民藝と考現学によるモノの発見
大震災、疫病から弱い物質とモノへ
Ⅲ 数寄屋と民衆──吉田五十八、村野藤吾、レーモンド
吉田五十八、村野藤吾と戦後
西欧による挫折と数寄屋の近代化
吉田の焦りと矛盾
明るい数寄屋と引き込み建具
線の排除と大壁造
村野のヨーロッパ体験と反東京
革命への挫折、北欧建築の発見
「西」の数寄屋
関西の小ささ、関東の大きさ
大地の発見
弱さの発見と瓦礫の上に咲く花
二種類の数寄屋
木材不足と細い柱
歌舞伎座をめぐる闘い
新歌舞伎座における村野の挑戦
捻子連子による吉田の挑戦
面取りと表層主義
西と東の長い確執
西の大陸的合理性、東の武士的合理性
千利休における西と東
小さな江戸、大きな明治
小さな建築としてのモダニズム
垂直性への嫌悪
丹下の垂直性
老馬にまたがるドン・キホーテ
ラボとしての数寄屋
中間粒子とオマケの可能性
中間粒子による増改築
レーモンドと日本
レーモンドのバウハウス批判
製材の木造と丸太の木造
民藝運動とぺリアン
チェコの民家と足場の丸太
レーモンドの斜め
ピロティから孔へ
土間と孔
Ⅳ 冷戦と失われた一〇年、そして再生
日本の敗戦と日欧の均衡の崩壊
冷戦が要請した、建築を媒介とする日米和解
若いアメリカの象徴、松風荘
和解がもたらした日本の分断
丹下健三の怨念と伝統論争
土着の縄文vs.アメリカの弥生
丹下自邸という究極の和洋折衷
自邸取り壊しと日本との訣別
縄文からコンクリートへ
建築による戦後日本の分断
鈴木成文と内田祥哉
西山夘三と生活への回帰
51C型と東求堂
建築生産とプレハブ
日本の木造建築のフレキシビリティ
日本のモデュール
バブル崩壊と木造との出会い
頭からでなく、モノから考える方法
失われた一〇年と新しい日本
おわりに
主要参考文献
図版一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

120
何とも刺激的で抜群に面白い。隈先生独自の視点で様々な二項対立が浮き彫りになる:桂離宮と東照宮、モダニズムと伝統建築、形態の建築と関係性の建築、書院造と数寄屋造、吉田五十八先生と村野藤吾先生、バウハウスとレーモンド氏、吉村順三先生と丹下健三先生、そして、有名な「伝統論争」での縄文と弥生。様々な相克を経て、隈先生が、学生時代に敵対視していた鈴木成文先生と内田祥哉先生に目覚める展開は感動的でさえある。檮原で、「頭で設計する」のではなく「モノから考える」方法に到達された道筋がとてもよく理解できる。素晴らしい一冊。2024/01/09

けんとまん1007

50
ここ10年ほど前から、建築というのは何なのかと思うようになっている。そこに人が暮らすということを考えた時に、どうあるとよいのだろうかと。もちろん、建築は、住まいとしてだけではないことも頭の中にあるが、どこかで分けて考えている。そんな建築の歴史。その価値を見出す、革新をもたらすのは、国籍に関係がない。伝統は革新の連続であるという言葉を想い出す。このあと、どんな風に変わっていくのだろうか。2024/02/16

うえぽん

36
自身の経験を補助線に、複線的で偶像破壊的に書かれたと著者が言う日本建築論。モダニズム対古い日本建築と言った二項対立を超え、内外の影響が交錯する建築史として、一般読者にも興味深く読める。筆者がより注目していると思われるのは、数寄屋や公営住宅標準設計51C型に典型的に見られる「小さな建築」と、和紙や「細い木造」に見られる弱く、しなやかな物質である。硬直的、権威主義的、恒久的かつ構築的な建築よりも、開放的で自然や環境との関係性を持つ建築に親近感を覚えた。多湿な災害大国に適合した柔軟な建築を追求すべきなのだろう。2024/01/19

ろべると

14
日本の建築には伊勢神宮のような力強く土着的な縄文派と、桂離宮のような貴族的で女性的な弥生派の争いがあったそうで、高度成長期に丹下から黒川・磯崎に繋がるコンクリート建築(安藤もそうだ)が優位となった。日本古来の木造建築は押し込まれていたが、時代の終わりとともに、木造本来の柔らかさを活かした空間構成にこそ、日本建築の将来があるという著者の主張につなげている。ほとんど同意だが、建築物が過激に主張するあまりに、伝統的な日本の景観を著しく阻害している状況に何の配慮もなされないことには非常に不満を覚えているところだ。2024/01/25

田中峰和

9
日本の建築は明治以降、西洋の影響を受け、追いつけ追い越せと金属とコンクリートなど硬いものを取り入れることに専念した。日本建築の良さを見直したのは西洋の建築家たちだった。ライトやコルヴュジェなど多くの建築家は木造の良さを世界に紹介し、日本の建築家も巻き込まれた。西洋建築が挫折し、日本の数寄屋を取り入れる建築家。日本の著名な建築家を並べると、東大建築科出身者が多い。都庁の設計で有名な丹下健三の弟子に黒川紀章や磯崎新など名だたる建築家が並ぶ。建築分野にまで及ぶ縄文と弥生。冷戦が日本建築の復興に寄与したようだ。2024/04/11

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