内容説明
お家騒動に遭遇したのを幸いに、知恵を絞り尽くして食と職にありつこうとする主人公の悲哀を軽妙に描き、映画「椿三十郎」の原作にもなった「日日平安」をはじめ、男勝りの江戸のキャリアウーマンが登場する「しゅるしゅる」、若いふたりの不器用な恋が美しい「鶴は帰りぬ」など、若者たちを主人公に据えた時代小説全六篇を収録。山本周五郎ならではの品のいいユーモアに溢れ、誇り高い日本人の姿が浮かびあがるオリジナル名作短篇集。(編/解説・竹添敦子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tengen
40
副題は青春時代劇、まさに。☆食うにも困る素浪人菅田平野は出会った十太郎のお家騒動に一計をめぐらし、士官を目論む。椿三十郎の原作。☆江戸から来た老女の躾が厳し過ぎると若家老に持ち込まれる☆遊女に迫られお母ちゃんと声に出る、そんなウブな男と女の不器用な恋路☆貧しく義父・弟の面倒を見る高の元に金持ちとなった実母から引き取りたいと申し入れがきた。☆足軽出の竹四郎は家老の娘こいそを嫁にもらうと心に決める☆もう戻れない悪党最後の善行だが☆彡 日日平安/しゅるしゅる/鶴は帰りぬ/糸車/「こいそ」と「竹四郎」/あすなろう2020/06/12
nstnykk9814
19
山本周五郎にはまっていたのは確か高校から大学にかけてだから、読むのは20数年ぶりだろうか。短編6本のうち「糸車」は「日本婦道記」で読んだはずだが、まったく覚えていなかった。情景描写も心理描写も新鮮でまったく古びた感じを受けない。時代物の良作の長所だろう。またいくつか再読したくなった。2016/07/02
酔いよい
13
収録6編の中でとりわけ『糸車』が強く印象に残る。実家が困窮したため、他家に貰われ育ったお高。病身の養父と幼い弟の面倒をみながら糸繰りの内職で家計を支える彼女はある日、今は父親が出世し裕福になった実家の生みの母親が重病と知らされる。そして会いに行くことになるのだが...「貧しくつましい暮らしをしている者には、小さな喜びがどんなにも幸福に感じられるものだ...」こんな一節が心に沁みる。山本周五郎の小説世界は限りなく温かい。2015/09/14
たーくん
11
再読→→→お家騒動に遭遇したのを幸いに、知恵を絞り尽くして食と職にありつこうとする主人公の悲哀を軽妙に描き、映画「椿三十郎」の原作にもなった「日日平安」をはじめ、男勝りの江戸のキャリアウーマンが登場する「しゅるしゅる」、若いふたりの不器用な恋が美しい「鶴は帰りぬ」など、若者たちを主人公に据えた時代小説全六篇を収録。山本周五郎ならではの品のいいユーモアに溢れ、誇り高い日本人の姿が浮かびあがるオリジナル名作短篇集。2021/06/05
那由多
10
表題作の『日日平安』読んでるうちに、織田裕二の映画に似ていると思い、裏表紙を見てみると『椿三十郎』の原作と書いてある。読むなら映画も観て、親しみやすい主人公とカッコいい主人公の違いを比べてみるのも面白いかもしれない。他にも5篇収録されているが、『糸車』と『「こいそ」と「竹四郎」』が爽やかで良かった。2018/05/08