内容説明
嘉永六年(1853)江戸。好奇心たっぷりの銀次と絵師の歌川芳徳は、妖怪伝説やゴシップネタなどを追う、低俗なかわら版を売りさばいて人気を博していたが、浦賀に来た黒船を見に行き、勢いで乗り込んだことがきっかけで人生が変わる。江戸一番の物知りと評判が高い佐久間象山に師事し、勝麟太郎や坂本龍馬、吉田松陰、西郷吉之助など、様々な幕末の英雄と出会い、大地震や大火災、死の疫病をかわら版で報じるうちに、銀次は報道の使命に目覚め、弱き大衆のために立ち上がる。 幕末の動乱の中で、真実(たまに嘘)を追い求めるかわら版屋を描いた、痛快時代小説!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
152
新聞の歴史の大部分は、売らんがための赤新聞が当たり前だった。まして「正確で公平な報道」など頭の片隅にもない江戸のかわら版など、煽情的なトンデモ記事ばかりだ。しかし主人公の銀次は黒船に乗り込んで取材し、幕府大老にも楯突き、幕末維新の著名人と知り合って仕入れた報道で歴史に影響すら与える。社会の木鐸などと気取る大新聞などよりも、はるかに爽快で格好いいジャーナリズムの基本を見せてくれる。京都を舞台とした続編では、おそらく土方や西郷と再会し討幕派と新選組との間で利用したりされたりのドラマが予想され、今から楽しみだ。2022/09/19
シャコタンブルー
72
黒船来航から始まり、桜田門外の変までの激動の時代を描いている。見境無く行動する銀次と大人しい絵師の芳徳のコンビがこの波瀾万丈の出来事をかわら版にして庶民に売り出す。時に黒船に乗りペリーと出会い、吉田松陰から思想の感化を受けたりする。坂本龍馬、西郷隆盛、土方歳三らの幕末オールスターも登場して飽きさせない。次は誰が登場するのだろうと楽しみでもあった。この辺りは城戸賞受賞作家らしくテンポや会話が生き生きとしてスピード感は抜群で一気読みの面白さだ。次作では大好きな高杉晋作も登場するのだろうか。今から待ち遠しい。2022/08/24
雅
68
幕末をかわら版屋の視点で描く。軽快で爽快なノリが面白い。シリーズ化してほしいな2022/08/19
えみ
66
たった一枚のかわら版が人々を救う!?何かと情報が錯そうした幕末に体当たり。とびっきりのネタ元から知識を授かりながらたった一枚の紙を武器に戦う男がいた。情報は鮮度が大事!ユーモアで飾り付け、多くの人の興味を惹き、今何が起きているかを広く周知させる。それが命を助け、人々を笑顔にする。金儲けは二の次で無粋な真似はしない、粋な漢・かわら版屋の銀次と絵師の歌川芳徳。黒船来航、安政の大地震、コロリ発生等々、彼らは騒めく市井の人の為、江戸の町の為に奔走する!歴史の先にいる読者には、幕末の英傑たちとの交流が感慨深い一冊。2022/11/19
ポチ
56
幕末の江戸での出来事をかわら版やの銀次が民衆の為に真実を面白おかしく伝える。次の舞台は京都。土方歳三に坂本龍馬など有名人も登場し、どんなかわら版を出すのか楽しみ。2022/08/15