内容説明
政策立案においてエビデンスに基づいた議論を行うべきという機運が高まっている。本書は小中学校の児童生徒と教師を主たる対象とし、学級規模に関するエビデンスについて検討する。学級規模は教師の労働や学力格差へどのような影響があるのかデータ分析を行い、教育政策をエビデンスに基づいて議論することの有用性と課題を論じる。
目次
まえがき
序 章 教育研究における「エピソード」から「エビデンス」へという趨勢
1 教育に求められるエビデンスと規範
2 教育政策に求められるエビデンス
3 EBPMと公共政策学
4 本書で扱う教育エビデンスの議論――学級規模への注目
5 本書の構成
第一章 科学的エビデンスとは何か――その定義と範囲
1 科学的エビデンスとは何か
2 科学的エビデンスの構成要素――実験的・統計的であること
3 EBPMへの懐疑
4 教育研究におけるエビデンスの定義と範囲
第二章 日本の義務教育における学級の位置づけ
1 日本の教育機会均等はどのように仕組まれているか
2 教育の衡平性に関するエビデンス
3 社会問題として注目される教師の労働
4 学級規模縮小をめぐる綱引き
5 要約と分析課題の設定
第三章 学級規模を通じた衡平性と適切性の実証的検討――エビデンス・レベルIIb
1 より多くの教育支出には意味があるか?
2 先行研究のレヴューと分析課題の設定
3 データ、変数、分析戦略
4 分析
5 まとめとインプリケーション
第四章 固定効果モデルによる学級規模が学力に与える効果推定――エビデンス・レベルIIa
1 学級規模と学力の因果推論
2 先行研究のレヴューと分析課題の設定
3 データと変数
4 分析戦略――計量経済学における固定効果モデル
5 分析
6 まとめとインプリケーション
第五章 教師にとっての学級規模――エビデンス・レベルIII・IV
1 問題の所在――教師の多忙さにおける学級規模への注目
2 先行研究の検討と分析課題の設定
3 データと変数
4 分析
5 教師からみた学級規模と多忙さ
6 知見の要約
補 論 なぜ「#教師のバトン」をつなぎたくないのか?――エビデンス・レベルIIb
1 教師のなり手不足という問題
2 OECD国際教員指導環境調査の分析
3 分析結果
4 まとめと考察
第六章 教育・福祉の公的負担意識の趨勢分析――エビデンス・レベルIIb
1 教育劣位社会とされる日本の公教育意識
2 国際比較および経年比較から見た日本の公教育費への意識
3 JGSSデータを用いた趨勢分析
4 教育劣位社会脱却への萌芽
終 章 定量的・非定量的エビデンスを用いた教育政策の議論に向けて
1 知見の要約
2 本書の位置づけ――教育エビデンス研究への批判的検討
あとがき
略語一覧
文 献
事項索引
人名索引