内容説明
「差別と偏見はどう違う?」「差別と区別は?」──差別が許されないことには、ほとんどの人が賛同する一方で、その定義は難しい。法律家の間でも、そのあいまいさに苦戦している。同性婚・夫婦別姓などのジェンダーをテーマにした「差別」から、人種をめぐる「差別」まで、その構造を気鋭の憲法学者が徹底検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
128
「差別」という概念がこんなに重いことを思い知る。例示として、著者は、アメリカの黒人差別における哲学的・法学的分析の歴史を辿り、日本の家庭法の歴史を通じて同性婚や夫婦別姓の問題を分析する。「差別」と「区別」の違いは何か、不合理な区別とは何か、平等権とは何か、差別されない権利とは何かなど、法律が取組んできた課題が明らかになる。しかし、「差別は狡猾」であり、社会と制度とのイタチごっこが続く。木村先生の本は、論点が明確、例示も分かりやすく、そして、著者の主張が明快という意味で、とてもフェアである。いい本だ。2024/01/06
クリママ
53
憲法学者である著者が、差別について、法、判例などをもとに理論的に述べる。アメリカの奴隷問題、日本でいえば家長制度などの歴史についても書かれている。法から解釈すればそういうことなのかと、知ることが多かった。差別が社会に定着した状態では差別が正当になり、そもそも差別だと思わないことがあるのは怖ろしい。ただ、世界中で、性別、人種など、日本でも、女性、朝鮮半島出身者、職業などで差別がある。なぜ人は他人を差別するのか。その元にある心理を知りたいと思っていたので、それはまた別の書籍を当たらなければならないだろう。2024/02/03
buuupuuu
27
法制度の観点から差別を考えるときの出発点は平等権であり、これは日本では憲法14条によって保障されている。だが日常生活において私たちはつねに区別をしているし、法自体、それを適用するためには区別をしなければならない。では許される区別と許されない区別の違いは何なのか。また区別の何が害悪につながるのか。日本の司法は、合理的根拠に基づかない区別を違憲とするという立場を採用してきたように見えるが、それが徹底されているとは言い難い。また、差別に起因する不平等の是正のために法がどこまで介入すべきなのかという問題もある。2024/02/06
Mc6ρ助
24
人と人を区別しない『絶対平等の規範・・刑事手続きの場面では犯罪が証明された人とそれ以外を区別・・所得税徴収・・所得に応じて額を区別・・法律は、その条文を適用すべきものとそうでないものとを区別することを本質的要素としており、絶対平等の規範は法規範としては成り立ち得ない。(p80)』合理性のない区別はいけないとして、結果、あの人たちと我々の法律が違う現実、そして単身老齢女性、ひとり親世帯の相対的貧困率がどちらも44%台、単身老齢男性も30%、げに(セーフティネットの不完全な)この世の中は区別で成り立っている。2024/03/10
やん
12
図書館。気鋭の憲法学者が差別とはどのような現象なのかを定義し、判決や研究を紹介しながら差別されない権利の意義を検討している。差別している人を糾弾するのではなく、「差別のしくみを分析し、どこにその悪性があるのかを解明し問題解決の糸口を発見する」(あとがき)。法の条文については文言のみに拘泥せずそれが制定された歴史的経緯を考慮するのも大切と。人の権利が軽視され、安易に「逆差別」が叫ばれ言論が幼稚化している今、考えを整理する道標となる。難しいテーマを読みやすい分量に章立てていて語り口もやさしい。いい本だった。2024/10/28




