アーバン・ベア となりのヒグマと向き合う

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アーバン・ベア となりのヒグマと向き合う

  • 著者名:佐藤喜和【著】
  • 価格 ¥4,400(本体¥4,000)
  • 東京大学出版会(2023/12発売)
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  • ISBN:9784130639507

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内容説明

都市に現れたヒグマたち
アイヌの人々に神と敬われ、豊かな自然の象徴とされながらも、しばしば駆除の対象ともなっているヒグマ。かれらはなぜ市街地に出没するようになったのか? 野生動物と人間の関係になにが起こっているのか? ヒグマの生態からその謎に迫る。


【主要目次】
序章 晩夏のヒグマの多様な素顔
第1章 北の森に暮らすヒグマの素顔
第2章 歴史的視点から見た人とヒグマの対立
第3章 農地への出没
第4章 市街地への出没
終章 これからのヒグマ管理
あとがき/引用文献


【序章より】
このところ、ヒグマの話題がつねに身近にある。私の身のまわりだけというのではなく、北海道全体でそうなのだ。毎年春になれば人身被害、初夏には市街地への出没や駆除の多発、晩夏には畑作物や果樹への食害、秋には果実類の凶作による餌不足と出没の関係が取り沙汰される。いったいヒグマになにが起きているのだろう。なぜ市街地に出没するのか、ほんとうに人とヒグマは共生できるのか、そのために私たちはどう対処すればよいのか。その答えはどれもそう単純ではない。地域によって、季節によって、年によって、ヒグマを取り巻く環境は変化し、人間社会も当然変化する。10年前と現在とでは人とヒグマの関係もまた違っている。

人とヒグマの関係についての答えは、絶滅か共存かの二項対立のなかにはない。人もヒグマも大切な地球の構成要素の一つとして50年後も100年後もともにこの地に暮らしていること、そのために一部の人が不安や負担を強いられない関係をめざす必要がある。いつの時代にも、どの地域にもあてはまるような一般的な解決策は存在しない。今起きていることを冷静に分析し、とりうる選択肢の最適な組み合わせはなにか、問題を抱えたそれぞれの地域がその時々に応じて考え決めていくべき問題だ。

冷静で効果的な判断のためには、ヒグマのこと、その他の野生動物や自然環境のこと、地域の人々の暮らしのこと、さらには地域以外の人々の考え方などをよく知り、地域の実情に応じていく必要がある。ヒグマについて、生息環境について、そしてそれを取り巻く地域について詳しく知れば、さまざまな場面で発生するヒグマに関わる問題を、他人事ではなく身近な関心事、自分事として共感を持ってとらえることができるようになるだろう。本書を手にとった方は少なくとも身近になったヒグマを知ろうと思ってくださったに違いない。本書が、さまざまな形で報道されるヒグマに関わる問題の背景にある、ヒグマという動物とそれを取り巻く環境、人との関わりのことを知っていただき、身近な動物として理解や共感を持っていただいたうえで、現在起きている問題の実態とその対処法について考えていただくきっかけになれば幸いである。

この本では、野生動物としてのヒグマの素顔と自然環境や人間の暮らしなどヒグマに関係する要素を取り上げ、生態学的視点から今なにが起きているのかを考察する。そして社会学的な視点も取り入れながら、今後の北海道におけるヒグマ管理について、そのあり方を議論したい。そのために、私のヒグマとの出会いから始まる約30年の足取りをたどりながら、ヒグマをめぐる旅におつきあいいただくことにしよう。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

マリリン

41
ヒグマの素顔の項の愛らしい仕草をするヒグマは魅力的。雷鳥と同様人間と出会っても無反応という生体もいることは知らなかった。生き抜く為の行為が獣害を生んだ背景は複雑だ。駆除から共存への方向転換の過程は特に興味深かった。先ず相手を知り、なぜそのような行動をするのか検証している。住宅地にまで出没するヒグマは恐怖だが、対策処置が他の動物に与える影響等、試行錯誤が多い中積み重ねてきた経緯は住民の理解と協力あってのものか。こうした取り組みは他の害獣・害鳥にも役立つだろう。できる事は実践したいと思う。2022/08/31

まさ

28
ヒグマの総合的分析本。タイトルと表紙の絵から軽く読めるものと思ってしまったけど、そうではなかった。ヒグマの生態、向き合ってきたこれまでの歴史と現在。人の生活が変わってきて、つきあい方にも変化が出てくる。カムイであることを前提とした存在であるものと思いたいが、現実ではどう折り合いをつけていくかが重要なのだから、"アーバン"なのだろう。2022/01/21

taku

19
札幌市はヒグマが恒常的に暮らす世界最大の都市らしい。市街地と森林が隣接している環境において、人や騒音に慣れた隣のクマさんが人の生活圏に姿を現すのは当然の結果といえる。効果的対策と継続への投資は、多様な価値観を持つ人々の理解と協力が必要。貴重な調査データと生態、軋轢と駆除から共生にシフトしてきた歴史、農村への出没と獣害、増えてきた市街地への出没、最後にこれからの人とクマとの関係について述べられている。それは他の野生動物を含む自然そのものとの共生だ。とても参考になった。クマ活に注目してみよう。2022/05/24

ちや

7
熊の生態がわかるし、都市としての考え方もわかる。良い本。2021/10/16

saladin

3
アーバン・ベア問題(市街地に現れるヒグマ問題)は、ヒグマの生息地に直接接する人口195万人の大都市・札幌ならではのものではあると思うが、その原因の分析が興味深い。母グマが子グマをオスから守るため(オスは自身の子孫を残すため、他のオスの子どもを殺すことがある)オスが人目を嫌う傾向を利用してわざと市街地に侵入する、など。その解決策は先頃読んだ2作と大同小異だけれど、著者が実際に地域の人々に啓蒙活動を行っていることもあって、より具体的になっており、地に足のついた提言であると感じた。2022/08/12

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