内容説明
小説の向こうに絵が見える! 美しき水墨画の世界を描いた物語
水墨画とは、筆先から生み出される「線」の芸術。
描くのは「命」。
20万部を超えたメフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』に続く、水墨画エンターテイメント第二弾!
主人公・青山霜介が、ライバル・千瑛と湖山賞を競い合った展覧会から2年が経った。
大学3年生になった霜介は水墨画家として成長を遂げる一方、進路に悩んでいた。
卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか。
優柔不断な霜介とは対照的に、千瑛は「水墨画界の若き至宝」として活躍を続けていた。
千瑛を横目に、次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つけられない現状に焦りを募らせていく霜介。
そんな折、体調不良の兄弟子・西濱湖峰に代わり、霜介が小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。
子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来。
そして、師匠・篠田湖山が霜介に託した「あるもの」とはーー。
墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画を通して、霜介の葛藤と成長を描く、感動必死の青春小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
524
水墨画の世界を通して前に進み成長するナイーブな青年・青山霜介の人生の物語。本書を読んで一度も挫折する事なく失敗もせずに順風満帆な成功だけの人生を送る事が出来たらそれはそれで素晴らしいだろうけれど、苦い失敗を経験して苦労を重ねて貴重な何かを掴んで行くことは非常に有意義だなと思いましたね。周囲から期待される場でしくじって大恥をかいても深くは傷つかずに立ち直れる事も強い性格で特技だと思いましたね。精神の修練の小説で彼はもう大丈夫だし進路は必然でしょうけれど惜しい気もまだしますので再び三度戻ってきて欲しいですね。2024/01/31
starbro
466
砥上 裕將、3作目です。 『線は、僕を描く』の第二弾にて完結篇、二番煎じにならず、水墨画青春成長譚の秀作でした。映画を観たので、主人公 青山霜介は、横浜流星のイメージで読みました。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003826192024/01/26
パトラッシュ
429
油絵を扱ったバルザック『知られざる傑作』では、カンヴァスに分厚く塗り重ねられた絵具の洪水が不可解な絵画を生み出してしまう。逆に修正がきかない水墨画は、画家は線ひとつでも絶対に失敗は許されず白い紙の前で立ち尽くす。その「どこまで描けばよいか」を決断できず揮毫会を失敗した霜介は、水墨画家としての自信を失ってしまう。弟子の苦悩を的確に把握した師匠の湖山は、様々な経験を重ねさせ迷いを払拭させようとする。別荘での制作から湖山の引退揮毫会まで描き続けるシーンの連続は、至高の境地を得た芸術家の圧倒的な輝きに満ちている。2024/06/25
ムーミン
348
子どもの何をいかに育てるのか。これまでの学校教育や学校教育に対する世の中の捉え方や期待について改めて振り返りこれからの社会においてどうしていくことがよいのか考えさせられることが多いこの頃です。この作品を読んでいて、「人間の持つ力や感性」「自然との向き合い方」「子どもの中に本来眠っているもの」といった視点が度々意識され、なぜか涙がこみ上げてしまう場面がありました。私たちはどこに向かえばいいのか。頭ではなく、感じることをもっと大切にできるような環境になっていくための、大人の役割とは……。2024/05/19
hirokun
317
★4 この作品を読んでの読後感をなんと表現したらよいのだろう?自分の表現力の拙さにより、うまく言い表すことが出来ないが、兎に角なんかほっとした気分にさせられた。水墨画については、著者自身が水墨画の作家であるためか、専門的な表現、解説が至る所に出てくるが、黒と白の極めて淡白な表現手法と取りながら、森羅万象を表すこと。余白の美を追求していること。水墨画が中国において禅と結びつきながら発展してきた事がよく理解できたような気がする。人生もまた芸術なのだろう。2024/01/22