内容説明
〈オートバイ内股で締め春満月〉〈しづかなる水は沈みて夏の暮〉――万華鏡を覗くかのような鮮やかさと孤独。十七文字にとらえられた究極の表現世界。第53回芸術選奨文部科学大臣賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうゆうpanda
42
「さくら貝と生(あ)れてうすももいろの視野」さくら貝から見た世界がうすももいろだとしたら、俳人と生まれてきた女性にとって世界はどんな景色だろう。そこでは雲雀がここよここよと歌い、天井の影にも味がついている。「水の地球すこしはなれて春の月」で始まり「春の月水の音して上りけり」で終わる句集。季節を一回りして永遠を感じさせる構成になっている。滴るほどの感受性と、それを少し控えめに表現しようとする処女性のようなものを感じた。「実紫わが詩も小さく円かなれ」そして彼女の生み出す十七音は「滴りの力抜けたるとき落ちぬ」。2016/10/18
チャーリブ
39
再読本。久しぶりに本棚から取り出して読んでみました。この句集を読んで好きになった俳人さんです。テレビで俳句の師匠が教えてくれるような上手い俳句には全く惹かれませんが、この方の「宇宙的」な俳句には痺れました。たとえば、「水の地球すこしはなれて春の月」「引力の匂ひなるべし蓬原」「星月夜生(あ)れむといのちひしめけり」「太古より宇宙は霽れて飾松」「いま遠き星の爆発しづり雪」などなど。こんな天空俳句ばかりではありませんが、有季定型であっても季語に倚りかからない句姿が素晴らしい。◎2023/05/16
たかしくん。
24
俳句集は滅多に読みませんが、現代的な趣とちょっとユーモアを交えた作品を楽しめました。「水の地球すこしはなれて春の月」「春の山どうも左右が逆らしい」「ヒヤシンススイススイスイスケルトン」「秋刀魚下げ夕空という女の空」「オルガンの鞴に漏れしクリスマス」等々。2014/11/02
双海(ふたみ)
13
なんとなく短歌に疲れたときに古巣の俳句に戻ることがある。正木さんの句集は装幀も素敵。「しづかなる水は沈みて夏の暮」2024/02/08
練りようかん
7
俳句は情景が立ち上がる瞬間の鮮やかさが好きなのだが、この句集はふわふわと漂うような情景の存在感が素敵だった。じわっときた「身の奥に湯のぬくみある藤月夜」、過去に抱いた感覚がよみがえった「天上にある水かげも鮎の味」、響きをかすかに聞き取った気がした「岸暮れて鴨着水の音幽か」がいいなと思った。最も面白く感じたのは「ヒヤシンススイスステルススケルトン」。しりとりになっていて、ススとスの二文字が三回入っていたり、ステル〜スケルの母音のエ+ルのリズムの遊び、トンのおさまりの良さ、色んな切り方ができて楽しかった。2024/04/25