潜水鐘に乗って

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潜水鐘に乗って

  • ISBN:9784488011321

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内容説明

【サマセット・モーム賞受賞、ホリヤー・アン・ゴフ賞受賞】48年ぶりに夫と再会するため、旧式の潜水鐘で海にはいっていく老婦人(表題作)、身体が石になる予兆を感じた女性が過ごす最後の一日(「石の乙女たち」)、やがて巨人になる少年と、人間の少女のなにげない日常のひととき(「巨人の墓場」)、数百年を生き、語るべき話を失いながらも再び物語を紡ごうとする語り部(「語り部(ドロール・テラー)の物語」)……妖精、巨人、精霊、願い事をかなえる木、魔犬……さまざまな伝説や伝承がいまなお息づく現代の英国コーンウォール地方を舞台に、現実と幻が交錯する日々をあるがまま受け入れ、つつましく暮らす人々の姿を、新鋭ルーシー・ウッドが繊細かつ瑞々しい筆致で描く12編を収録した短編集。/【目次】潜水鐘に乗って/石の乙女たち/緑のこびと/窓辺の灯り/カササギ/巨人の墓場/浜辺にて/精霊たちの家/願いがかなう木/ミセス・ティボリ/魔犬(ウイシット)/語り部(ドロール・テラー)の物語/訳者あとがき=木下淳子

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

63
不思議でどこか懐かしい寂しさを思い起こさせる短編集。48年経った今も海で亡くなった夫の事が忘れられないアイリス。老い先が短くなった彼女は海にいる夫に逢いに行くことにした。その時に潜水するのは舩ではなく、ワイヤーで繋がれた鐘だという点が斬新過ぎる。弔いの鐘かしら。だが、アイリスがぼやけた視界で見た夫はずっと若い姿のままだという事に衝撃を受ける場面に私もたじろいだ。「喪失の哀しみは時が癒してくれる」。それは真理ではない。アイリスの夫の姿は、癒えない哀しみの象徴でもあり、哀しみの主体が受けた時の重さを鏡として2024/03/29

天の川

61
イギリス・コーンウォールが舞台の短編集。コーンウォールはダートムーアと断崖絶壁の荒れた海に育まれた、アーサー王伝説や妖精、巨石文化のケルト人の地だ。若くして海で命を落とした夫を探そうと潜水用の鐘に乗り込んだ老女の表題作は美しく、その結末は哀しい。石化までの残り時間を元夫のために費やす「石の乙女たち」、何気なく瞼につけた青いクリームによって見えた母に寄り添う者「緑のこびと」、廃屋にさざ波のように精霊たちの言葉が満ちる「精霊たちの家」…寂寥感ある不思議な味わいの作品たちは後を引く読後感揃いだ。2024/01/21

あたびー

54
短編集。英国コーンウォール地方。モーリア「原野の館」のイメージからすると、暗く、気候は厳しく、荒野には泥炭の穴や底なし沼があり、人や獣が時々落ち込む。本作の中にもそういった表現が出てくるが、それよりも特徴的なのは幻想が普通の人々の暮らしに何の疑問もなく挟まっている物語性だ。海難事故に遭った夫はマーマンになり、女たちは時々石像になり、小瓶からは記憶が立ちのぼるが、驚きも叫びも起こらず、意識は暮らしの様々なことに配られていく。読後しばらくの間反芻していたい類の物語たち。2024/03/13

mii22.

50
著者の出身地イギリス南西部のコーンウォールに伝わる伝説を下敷きにした不思議な物語たち。妖精、巨人、精霊などの存在を強く意識させながらもごくありふれた人々の日常のワンシーンが描かれている。言葉の表現は優しさと力強さを併せ持ち現実のなかに幻想が溶け込む。どのお話も余韻に浸りたいという思いから急がず一篇づつ丁寧に読み進めていった。人々の心情には孤独、喪失、痛み、悲しみ、切なさや苦々しさを感じるものもあるけれど、根底には人間を愛おしく思わせる温かみのあるお話で幻想的で美しい装丁も含めてとても好みの一冊だった。2024/02/09

ケイティ

40
なおも伝説が息づくイギリス南西部のコーンウォール地方を舞台にした12編の短編集。あまり読まないジャンルですが、読友さんのレビューで興味をそそられ、少しなじみのある地だったので手に取ってみたら、静かで抑えた描写が洗練された物語でした。特に表題作をはじめ、前半が好み。一編が短いので寝る前に一編ずつ読むと、幻想と現実が溶け合う不思議な感覚に浸れました。幻想的なのに、ささやかでつつましい日常が土台にあるのがイギリスらしい。美しく詩的で、どこかもの哀しさが漂う世界観もよかった。装丁も素敵。2024/03/07

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