「リンゴの唄」の真実 - 戦後初めての流行歌を追う

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「リンゴの唄」の真実 - 戦後初めての流行歌を追う

  • 著者名:永嶺重敏
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  • 青弓社(2023/11発売)
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  • ISBN:9784787220790

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内容説明

並木路子が歌う「リンゴの唄」は敗戦後の日本の心象風景を象徴する歌として「敗戦後の人々を勇気づけた歌」「焼け跡のBGM」として扱われている。

しかし、この曲の作詞・作曲の成立過程、映画やラジオ、レコードを通じて爆発的に流行した社会的な背景、人々がどんな思いで歌ったのか、などの実態については不明のままだ。

作家や文化人は「リンゴの唄」をどこで聞いたのか、引き揚げ船ではどうやって歌っていたのか、無名の人々の日記にはどう書かれていたのか――NHKの番組履歴も詳細に検証して、「歌と時代」を描き出す。

目次

凡例

はじめに

第1章 戦後初の音楽映画『そよかぜ』と並木路子
 1 八月十五日と文化的真空状態
 2 「戦争の歌」の呪縛
 3 「歌を忘れたカナリヤ」
 4 日本芸能社による「新流行歌の大衆審査」
 5 「ムシズ」が走る映画『そよかぜ』
 6 『そよかぜ』のストーリー
 7 戦争映画と敵性音楽の呪縛
 8 「リンゴの唄」は挿入歌?
 9 映画『そよかぜ』は一カ月で撮影された
 10 並木路子「リンゴ娘」に抜擢

第2章 「リンゴの唄」の誕生と反響
 1 「リンゴの唄」の曲は汽車のなかで書かれた
 2 歌詞を書いたのは戦時中?
 3 東京での封切り興行は二週間だけ
 4 地方での上映はさらに少ない
 5 とりえは「リンゴの唄」のリズムだけ
 6 高見順も「全くひどいもの」
 7 『そよかぜ』は本当にGHQの検閲第一号か
 8 音楽映画が相次ぐ

第3章 「リンゴの唄」、ラジオで人気沸騰する
 1 新聞のラジオ欄と並木路子
 2 並木路子のラジオ出演履歴
 3 並木路子の回想
 4 『砕かれた神』の衝撃
 5 『洋楽放送記録』と『放送番組確定表』という資料
 6 「リンゴの唄」の放送形態の多様性
 7 ほかの歌手も「リンゴの唄」を歌う
 8 並木路子のラジオデビュー
 9 『映画スターの午後』の解説者として
 10 歌手としての並木のラジオデビュー
 11 初めてラジオで「リンゴの唄」を歌う
 12 『希望音楽会』に「リンゴの唄」の希望殺到
 13 『希望音楽会』への出演
 14 『紅白音楽試合』で「リンゴの唄」を歌う
 15 古川ロッパの日記
 16 終戦の年の「歌いくらべ」

第4章 レコードによる流行の本格化
 1 終戦後のレコード界の苦境
 2 「リンゴの唄」はB面?
 3 レコードも圧倒的売れ行き
 4 レコードによる流行の増幅作用
 5 一九四六年の「リンゴの唄」放送
 6 ラジオの「ながら聴取」による流行拡大
 7 実演でリンゴ投げのパフォーマンス
 8 並木路子というスターの誕生

第5章 「リンゴの唄」を歌う国民
 1 駅や学校で歌う
 2 終戦後のラジオの新番組
 3 『のど自慢』で最も多く歌われる
 4 進駐軍と「アップルソング」
 5 復員船で看護婦たちが合唱する
 6 捕虜収容キャンプで兵士たちが大合唱する
 7 引き揚げ船で船員たちが歌う
 8 終戦と帰国をことほぐ歌
 9 引き揚げ歌の伝統と「赤化」

参考文献

付録1 『そよかぜ』概要と挿入歌
付録2 『洋楽放送記録』『放送番組確定表』補遺

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

241
戦後第一号の流行歌とも言われる「リンゴの唄」の”真実”を、NHKの番組履歴などを丹念に拾って検証したドキュメント。この歌が誕生するきっかけとなった映画「そよかぜ」は終戦後すぐ、1か月で撮影され、10月11日に封切られた。しかし、当時の新聞評でも「ムシズが走る、薄汚い、粗悪品」とまで酷評され、上映した期間はなんと、2週間のみ! その挿入歌が、なぜ国民的ヒット、となったのか? これまでも、数多くの本で紹介されてきた、この歌の裏話だが、この本が実証した、番組履歴からのデータは面白かった。2020/12/15

へくとぱすかる

56
半年ぶりに再読。改めて読むと、今ほどメディアのなかった当時、だからこそ、幼児から大人までが歌い、どこへ行っても「リンゴの唄」を耳にできる現象が存在したのだと思う。前回の感想にも引用した「神話化」ということば。それが起こりうる条件は整っていたということだろう。進駐軍の手前、戦争以前の古い曲しか再発できなかった時期、ほとんど唯一の新曲だったことが、この歌の存在を際立たせることになったこともよくわかった。2019/03/21

へくとぱすかる

42
戦後第1号のヒット曲は、当時、実際はどう発信され、受容されたのか。映画からレコード発売までを、歌手・並木路子のラジオ出演や舞台(現在の用語なら「ライブ」)について、発掘した乏しい資料から解明していく。ドラマ等の戦後の描写への象徴的使用を、著者は「神話化」とみて、なぜそうなったかが残された問題だと考えているようである。ページ数が少なかったが、この曲についてもっと知りたかったと思う。2018/10/27

hitotak

8
終戦直後から大流行した「リンゴの唄」が、どのような過程で生まれ、広がっていったのかが書かれている。NHK一局しかチャンネルのなかったラジオはこの曲を何度も流した。国民の間には一日中かけっぱなしにする生活習慣があり、明快な歌詞とメロディが新鮮な印象をもたらした。皆がこの歌を口ずさみ、引き揚げ船や幼稚園等至る所で合唱され、どこへ行っても耳に入ってくるという状況にあったというから本当の大ヒット曲だったのだろう。並木路子はステージから赤いリンゴを投げながら歌い、客席はリンゴの争奪戦が行われ、大騒ぎになったという。2019/08/11

ちゃーりー

3
”リンゴの唄”と当時の流行歌に関するる話、資料の少ないなかでの調査研究に著者の労を思う、この歌に少しでも興味のある人は読んでみるといい。2020/07/12

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