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内容説明
エンジェルとキューピッドは何が違うのか。キリストがかつて天使とみなされていたのはなぜか。堕天使はいかにして悪魔となったか。「天使」と聞いて、イメージが浮かばない日本人はいないだろう。しかし、天使をめぐる数々の謎に直面したとき、私たちは想像以上に複雑な陰影を彼らがもっていることに気づくはずだ。天使とは一体、何者なのか――。キリスト教美術をゆたかに彩る彼らの物語を追いかけてみよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
87
ギリシャ語の『伝令』『使者』を語源とする『エンジェル』に関する研究書。天使のような姿で描かれるキューピットは古来、異教の愛の神だった。日本の天照信仰が国津神を呑み込んだのを想起させる。ドラマチックな『堕天使』の章。天使が地上に墜ちたのは人間の女を愛したから。神々の王ゼウスも、次々と人間の女と交じわい子を成していくが、代わりに罰を受けたのは生まれた子供たち。これは反発したくなるというもの。『正統』と『異端』を軽やかに飛び越える天使たちをイスラム学者アンリ・コルバンは「天使は想像力の別名」と説いたという。2016/07/18
マエダ
75
”天使とは本来、さまざまな宗教や神話のあいだのみならず、正統と異端のあいだの線引きすらも、その翼で軽やかに飛び越えて、人々の心身にそっと触れてきたものなのだ。”2017/11/18
佐島楓
56
宗教に造詣が深い読者でないとピンとこないだろうと思う。美術の本として参照するのも面白い。2016/08/05
kaori
33
普段安易に使い過ぎている「天使」という言葉。言われてみれば、天使とキューピッド(プットー)の区別なんか私達についていたかしら?単純に有翼のものを一括りで天使と呼んでいたのに。何故こんなに曖昧に、だが何故こんなにも慣れ親しんで私達の生活に浸透しているのか、その理由が良く分かる内容。2016/05/29
かふ
21
西洋の芸術(教会美術)から天使の受容のされ方を見ていく評論。天使が神と人との仲介役であり、言語(ロジック)よりも芸術(アナロジー)に描かれるように、異端的なディオニュソス(ダイモン)で初期キリスト教ではイエスも天使とされた。天使(異端の神々)がやがて人間の女の誘惑に負けてタイタン(巨人)を生み出す。つまり欲望で地に堕ちたということらしい。だから堕天使なんだ。それでも上級天使の熾天使(セラフィム)や智天使(ケルビム)は神の使命を果たした。ミルトン『失楽園』とか、マリアの受胎を告げたのがミカエルとか。2021/02/02