内容説明
40歳にして初心者マークの戸倉は、友人の須崎と、その彼女琴美とドライブへ。退院したらどこかいこうという約束を果たすのだ。キン肉マン、北斗の拳、奥田民生……車中の合唱、前方を走るタンク車に興奮、振られた男は高速道路で捨て身の行動に打って出る。そして、大切なことに気付く瞬間が訪れて――。愛しさと哀しみを鮮明に描いた恋愛小説。〈解説〉大塚真祐子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
69
40代で運転免許を取ったライターが、知人ら四人と遠距離ドライブする(だけの)四話。大きな出来事に遭遇するでもなく淡々と旅は続きます。車中で交わされるサブカルトークには、心揺さぶられるものはありますね。友人の恋人に、ふと恋に落ちてしまった主人公。タイトルの「愛のようだ」は、そんな不意にやってきたおっさんの恋心を表しています。思い人は不治の病を患っており、カノジョへの感情は、密やかに胸の奥に仕舞い込むしかありません。この切なさが良いですね。男が集まったとて下ネタばかりじゃない、など共感すること多い作品です。2021/12/27
アマニョッキ
58
もう何度も読んでるのに、好きなところも分かってるのに、何度目でも新しい感動がある。また戸倉に惚れる。戸倉に認められるような女になりたいと思う。いや、むしろ男になって一緒にドライブしたいのか。「しかし良いものだなあ、…女の乗らない車というものは」なんて一緒に言いたいのか。とにかくもうこの車中小説が好きすぎて、今すぐこの世界に飛び込みたいのだ。戸倉と一緒に移動して、音楽を聞いて、口ずさんで、分岐を間違えたり不味い珈琲を飲んだりしたいのだ。そして第一話とエピローグのあのラストシーンを何度でも味わいたいのだ。2020/03/21
三代目けんこと
40
目的地を決めず、馬鹿話をしながらドライブしていた大学生時代を、懐かしく思った...2022/07/06
ちぇけら
26
記憶は、ぼくを追い越す車のようだ。バラバラと遠慮なくやってきて、いつかは過ぎ去ってしまう。ぼくの車も誰かの記憶の1つで、いずれその誰かを「追い越して」しまうのだろうか。そのとき車内では、3人いれば1人は口づさめるような「沁みる」曲が流れているのだろうか。まるで映画みたいで、できすぎだと思うけれど。「若いと、ちゃんと失恋できる。失恋して、傷つくことができる」感情も記憶の一部ならば、この(曖昧な)感情も、ぼくを傷つけないように、やがて消えてしまうのだろうか。ぼくはそんなことを思いながら、アクセルを踏み込んだ。2020/08/17
Ribes triste
18
40歳で自動車免許を取った戸倉を中心に、物語は運転中の車内で、時に陽気に時に切なく進行する。長嶋さんと同世代なので、聴いている音楽、アニメ、マンガ、映画も、説明抜きで分かってしまうのが、何ともこそばゆいのです。(斎藤由貴やキテレツ大百科のOPも)。逆にいうと、同級生の友人達とドライブすると、ちょうどこんな感じだよなあと、しみじみ感じました。2020/04/27