内容説明
オスマン帝国の終焉から100年
日本は「帝国」の智慧に学べ
紛争と閉塞を生む「国民国家」の限界を超えるために
第1次世界大戦後、西欧列強が「国民国家」を前提とし中東に引いた国境線。それが今なお凄惨な戦争の原因になっている。そのシステムの限界は明白だ。
トルコ共和国建国から100年。それはオスマン帝国崩壊100年を意味する。以来、世俗主義を国是とし、EU入りをめざしたトルコ。だが、エルドアン政権のもと、穏健なイスラーム主義へと回帰し、近隣国の紛争・難民など国境を超える難局に対処してきた。ウクライナ戦争での仲介外交、金融制裁で経済危機に直面しても折れない、したたかな「帝国再生」から日本が学ぶべきこととは? 政治、宗教からサブカルチャーまで。ひろびろとした今後の日本の道筋を構想する。
◆目次◆
プロローグ 「帝国」をめぐる、新しい物語を探して 内田樹
第1章 現代トルコの戦国時代的智慧に学ぶ
第2章 国民国家を超えたオスマン的文化戦略を考える
第3章 東洋に通じるスーフィズムの精神的土壌
第4章 多極化する世界でイスラームを見つめ直す
第5章 イスラームのリーダーとしてトルコがめざすもの
第6章 日本再生のために今からできること
エピローグI トルコに学ぶ新しい帝国日本の転生 中田考
エピローグII 明日もアニメの話がしたい 山本直輝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ta_chanko
21
21世紀は再「帝国」化の時代。中華帝国・新オスマン帝国(トルコ)・新ムガル帝国(インド)・新ペルシア帝国(イラン)・新ロシア帝国...。西洋近代に押されていた諸地域が復権。国境を越えて通用する言語・宗教・文化などを通して、諸民族間の交流が実現。漢文・イスラーム・アラビア語などなど。日本のマンガ・アニメもリンガフランカになり得る。一人ひとりが文化・教養に親しみ、みんなでを育んでいくことが大切。2024/01/20
amanon
7
何とも言えず、暗澹たる気にさせられる一冊。内田氏が、現在の政治家や官僚にダメ出しをし、今の日本には戦争をする能力はないと言い切るのが、とりわけ印象的。そんな坂道を転がるだけかに思える日本に唯一残された可能性が漫画やアニメというのが、これまたトホホ…別にそれらのサブカルチャーを軽視するわけではないけれど、それでもそれらが唯一といわれると、そこまで日本は…という気にさせられたしまう。ただ、上で述べてきたことを矛盾するようだが、ムスリムの間で漫画やアニメがあそこまで浸透し、人気を得ているという事実に驚愕。2024/12/31
まさにい
7
表題から予想していた内容と違っていたように感じた。でも面白く読ませてもらった。宗教や哲学を学ぼうと思っていて、何冊かの本を読んでいるうちに、ふと、「日本のアニメって、外国の子供に受けている」「だとすると、このアニメが、潜在的意識に残り、もしかしたら宗教的対立を緩和するかも」等と考えていた。荒唐無稽かなとも思ったのだが、主張内容は異なるが、似たような考えをこの本の鼎談を通して語られていたのにはびっくりした。残念ながら、ここに出ているアニメについては、全く知らないのだが……。ちょっと読んでみようかなぁ。2024/10/06
みさと
6
思想家・武道家の内田樹、日本を代表するイスラム法学者の中田考、トルコの大学で教鞭を執っている山本直樹による鼎談。中田・山本が語るムスリム世界の話を内田が聞くという形だが、内田が専門外の解釈を投げるとそれに触発されて議論の質が一段上がる。対話・議論とはこうやって旋回しつつ高め合い深め合っていくのかという姿を見ることができる。トルコの今を語る話が興味深くて面白い。日本アニメが大人気で、アニメで日本語を覚える若者が沢山いて「だってばよ」とか盛り上がる。一方、昔の日本のように古典教養を修めた人が市井に普通にいる。2024/02/26
サカナ
3
古典を用いての殴り合い(マウント)のくだりが、確かになーと思いました。少し前はマルクス読んだかどうか、みたいなのはあったんだけど、今はないよね。強いて言えば私の出身学部はTheCELL読んでるかどうかみたいなのはあったけど… イスラム圏における原文で読んでるかどうかマウントも興味深い。アラビア語講座ちょっとYouTubeで見たけどとても勉強できる自信がない。 スーフィズムの本も読んでみよう。2024/06/28