内容説明
「どこで、どうやって生きていくのか、うちは自分で決めたい」12歳の少女・真記は上京を目指すも、80年代後半の狂騒に翻弄され……親世代にも子世代にも読んでほしい、宝石のような20年間を描いた佐川光晴の最新長編小説。
広島は尾道の小学五年生・真記は、1970年生まれ。子供のいない伯父夫婦からかわいがられ、養女になるかもと心配事は絶えない。中学では英語部の朗読劇が大成功をおさめ、英語を一生の仕事にしていこうと決意する。念願の学生生活は、80年代後半のバブル経済のただなかで、順調そうにみえたのだが……。
当時の時代背景や男女の考え方を、時に繊細に、時にユーモラスに描出する。真記と同時代を生きた人にも、そしていま同世代の人にも読んでほしい青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん🍊
95
尾道で生まれ育った真記の12歳からの20年の物語、いつかこの街を出て自由に生きたいと願ってきた真記は両親にも養子を望む伯父にも縛られず、「一度きりの人生男も女もない自分の気がすむよう思い切りやってみい」という父親の言葉に後押しされ、自分の力で東京の大学に入り英語教師になる夢のため日々努力をしてしっかり生きていた、周りの助けてくれる情のある人々にも恵まれていたが、人生思い通りにはなかなか行かない、しかし自分を貫き対処を考え強く生きていく真記は逞しい、これからは幸せになって欲しい。2024/03/06
ゆみねこ
85
尾道の12歳の少女・真記。「どこで、どうやって生きていくのかうちは自分で決めたい」と誓ってから20年。大好きな英語を学び友情を育んだ中高、念願叶って進学した東京での大学生活からの大きな転換。必死で働き奨学金返済に努めた時期。真記の真っ直ぐな生き方に感動。とても良い読後感を味わえた。お薦め!2024/02/10
Ikutan
76
尾道で育った真記。将来の夢は英語教師。親の都合で不安定な子ども時代を過ごし、経済的な理由で夢を諦めながらも、自分の道を自分で切り開いていった彼女の成長を20年に渡って描いた物語。子ども時代に培った家事力、必死に身に付けた英語力、持ち前の明るい性格、体力と親譲りの歌唱力..夢は叶わなかったけれど、逆境にも負けず生きることに前向きで、その時々に持てる力を発揮して、道を切り開いていく姿は読んでいて気持ちがいい。ただ、同じ時代を生きてきたのでこのラストに頷けたけれど、今の時代だったら別の物語になっていただろうな。2024/03/04
えみ
59
どんな人生も物語がある。だがしかし、こんなに山あり谷ありも珍しい。そして大事な時、必要な選択肢が与えられないという不幸。不自由の中で無謀な夢を見ることなく、現実を見据えて迷い悩みながらもがむしゃらに運命に立ち向う一人の少女の半生を描いた物語。纏わりつく不安、境遇への不満…。上手くいきそうだと喜んだところで堕とされる。だけど、へこたれない。それでも過酷な運命に抗うことなく受け入れてとにかく行けるところに行く。そしてそこで見つける、等身大の生き方を。素敵で素晴らしい女性!家族を大切に思う、これは愛の噺だ。2023/12/29
ぶんこ
56
尾道で家族4人で平和に暮らしていた真記。小さい頃から英語を使っての仕事を夢見て密かに努力。海外旅行者のガイドや、評判店のモモンガ亭でのバイト、奨学金も利用して授業料以外は自力で頑張っていましたが、父が破産して授業料も払えなくなる。それを知った途端の真記さん、高崎の看護学校に行ってしまう。そこで清掃のバイトをしながら看護師資格を得る。奨学金を返済した3日後、ハワイへの豪華客船のシップナースに。くよくよウジウジしない前向きな姿勢は立派。船のシェフだった人との結婚と波乱万丈でしたが、頑張りが報われて嬉しい。2024/02/27