内容説明
近代ヨーロッパの文明思想は結局、国境やおカネといった虚構に支配された今日の世界をつくり出した。実体のある、結び合って暮らす共同体的世界をとりもどすにはどうすればよいのか。その手がかりは、日本の民衆が培ってきた土着・伝統の思想・文化にあった。自然信仰や仏教思想の展開をわかりやすくひもときながら、転換の時代をともに生きるための思想を構想する。自然と人間の関係、労働や共同体をめぐる独自の思想を構築してきた哲学者・内山節が、2019年2月に開催された「東北農家の二月セミナー」にて語った新しい思想論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
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「東北農家の二月セミナー」での内山先生講義録第3弾。本書によれば、このセミナーは30年以上に渡って続けられている由。活動の息の長さに改めて敬服の思いを抱く。前回第2弾では、資本主義経済の本質の切り込むと同時に、新しい市場経済のあり方について、伝統回帰的な農業や市場にも触れ、利他の精神で自然や人々と繋がり合う姿を説かれていたように思う。今回は、明治以降近代化が進められる中で、打ち捨てられてきた日本の伝統的思考について、日本の社会は生きている人間だけでなく、死者と自然を含めて構成されていること、仏教受容等々→2021/05/10
プリン大魔神
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包括的な感想ではなく、局所的な感想です。 「差別の根本原因は概念をつくったこと、この世からあらゆる概念を消す、そういう生き方をすればあらゆる差別がなくなっていく」という華厳経の立場が興味深かったです。近年SOGIで様々なセクシャリティーについて名付けが行われていますが、それが差別を助長しているように思うからです。セクシャリティーは流動的でグラデーションにように限り無く細分化可能なものだと思うので、躍起になって全ての名付けようとせず、逆に「人類愛」という言葉で包括してはどうかと思いました。 2023/02/26