内容説明
際限なく利潤を追求する資本主義経済が暴力的に台頭し、今日の荒廃した世界をつくりだしている。そもそも資本主義とはどのような経済なのか。それは伝統的な経済とどう違うのか。農業や共同体と資本主義の関係は? これらを平明に解き明かしたうえで、おカネに振り回されない、自然や共同体とともにある経済のかたちを構想する。その蓄積を一番もっているのは、農業だ。自然と人間の関係、労働や共同体をめぐる独自の思想を構築してきた哲学者・内山節が、2018年2月に開催された「東北農家の二月セミナー」にて語った新しい経済論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
52
群馬県上野村を拠点の一つに活動されている哲学者の内山節さん。東北地方の農家団体が主催した勉強会の講義録、第2弾。資本主義経済のごく原理的なあり方と、現代における問題点を具体的に分かりやすく説明する一方で、これからの市場経済のあり方について、伝統的な労働や経済のあり方に学ぶことを説く。社会を近代以前に直接戻す訳にはいかないけれども、行き過ぎた資本主義を考える上でも参考になるのではと思った。ベストセラーとなった『人新世の「資本論」』が訴える脱成長経済への一つの例ともなり得るのではないか。まずは動いてみる事を。2021/05/06
Go Extreme
3
資本主義の終わりが意識される時代のなかで 労働と交換、流通:地域内交換経済 働き方改革 地域外への流通 今日の農業―2つの方向 古い農業への回帰 資本主義的経済とは:貨幣の自己増殖をめざす経済 資本主義の自滅を食い止めてきたもの 今日の荒廃した資本主義 資本主義のメカニズムと人々の気持ち 地域通貨 ほどほどの市場経済を模索する動き:ともにある経済の形 利他の社会の思想的伝統 農業が発信できるもの 今日の経済について:経済指標が有効性を失っていく これまでの常識が通用しない2021/04/26
あづみ
2
資本主義は足枷があってこそ。それが外れたから狂ってきた…なるほどなあ。2021/08/19
トラッキー
1
資本主義は何でも最後はお金に換算するから、分かりやすく効率的ではあるが、本来の経済活動の目的(人々の暮らしを豊かにすること)を見失って、暴走を始める恐れがある。というか、実際暴走している。資本は本来、生産活動や貿易に投じられて、人々の生活を豊かにしつつ緩やかに自己増殖するのが望ましいが、カネがカネを生む金融に投じた方が、手っ取り早く増えるので、どうしてもそちらに流れやすい。金融は栄えても、それ自身では実生活を豊かにしない。カネがいくらあっても、使う方法がなければ意味がない。そんなことを考えさせられた本。2024/05/26
空野とり
1
読みやすかった2021/11/21