内容説明
太平洋戦争さなか、幼くして母を亡くしたイコは父の再婚相手になじめぬまま、生まれたばかりの弟と三人で小さな村に疎開することに。家のそばにある暗く大きな森がトンネルのようで怖くてたまらなかった。同級生たちはあの森に脱走兵が逃げ込み自殺したのだ、と噂をしていた。ある夜、森の奥からハーモニカの細い音色が流れてくる。数日後、沼で失くしたイコの下駄が森の出口に置かれていた。「あり・が・とう」イコはちいさく呟いた。戦争は激化し、東京大空襲で半死半生の父が見つかる。不安に押しつぶされそうになったイコは森に入る。「兵隊さーん」そこでイコが目にしたものは……。「「魔女の宅急便」の著者が描く少女の戦争。(解説:小川 洋子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二戸・カルピンチョ
22
イコちゃんは栄子ちゃんなんだね。イコちゃんが生まれてから戦争が終わるまで。もちろんそういう「ご時世」のせいで、大変な思いもひもじい思いも悲しい思いも、沢山沢山あったのだけど。イコちゃんはわがままを言っても泣きたくなっても心が消えてしまいそうになっても、たくましかった。兵隊さんも周りの人も「ご時世」のせいで頑張ってるから頑張るしかなかった。神風が吹くと信じるしかなかった。イコちゃん視点で語られていても、人々の心の機微の描かれ方は鋭い。またトンネルの森の存在がイコちゃんに寄り添うようで不思議に温かい。2025/08/15
ひでお
6
角野さんの自伝的小説だという。子どもの視線に寄り添って、つらさもかなしさもこわさも、それを克服する勇気も、この本の中に詰め込まれています。同事に、ことばでは語らないおとなの気持ちも、じんわり伝わってきます。戦争を生き抜いた人びとも、少なくなりました。この本が、人びとが生きた時代を伝えて次の世代へとつながると信じたいです。2024/11/12
Hiroki
6
朝霞図書館 魔法使いのエイコさん、見事にかかってしまいました。10歳のエイコさん、つまり少女が少年などに比すると、なんとまぁ複雑怪奇な存在である事でしょうと思い知らされた。ジタバタしてもどうしようもない現状であるならば淡々と見据えるしかない。一般に男子は、そういった現状は見て見ぬふりをするか迎合して安楽な道を選ぶ。少女は違うんだなぁ、一旦受け入れてその地平をスタートラインにする。迎合はしない。スタートが現実に立脚してるから、夢も現実の延長なのだ。対して、少年の夢は往々にして現実から乖離する。2024/06/20
honeyeggtart
5
小学生の娘が読んでいたので私も読んでみました。私の世代(40代半ば)だと戦争を経験していなくても、戦前戦中戦後の影響が日常に残っていたのですが、今の小学生にとっては遥か昔の出来事なのだなと改めて思いました。2025/04/24
ごま麦茶
5
イコという少女の目から見た戦争。やわらかく優しい文章で描かれていて、読みやすくてどんどん読めましたが、それでも、何度もぎゅっと苦しくなるところがありました。年齢的なせいか、光子さん目線だったらこの時は…を考えてしまいました。平和に暮らせている今、戦争は過去のことだと忘れてしまっていると改めて反省。読めてよかった。2023/11/30
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