内容説明
高校二年生の寿美子には、れいちゃんという幼なじみの友人がいる。通学を共にするふたりだが、過去に複雑な事情を持つれいちゃんは、可憐な容姿とは裏腹に、他人の容姿を貶めたり、陰口を撒き散らすことでコミュニケーションをとる少女だった。そんな態度に違和感を覚え始める寿美子だが、やがて彼女の吐く毒は自分自身にも及んでいるのではないかと思い至り……。 少女同士の複雑な関係に切り込んだ青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
えんちゃん
78
砂村さんが描く毒友物語。途中までずっと人目を伺い自意識過剰のすみちゃんにイライラさせられた。自分で友だちを選んでいいってことに気付いてから飛躍的に運が上向く。長く助走をとった方がより高くに飛べるからね。でも私はすみちゃんよりれいちゃんに親近感が湧いちゃった。んー。私も性格悪いので何とも言えん。2023/12/29
花ママ
67
幼なじみの寿美子とれいちゃん。寿美子が第一志望の高校に落ちたために、高校まで一緒になった。女の子であれば、一度は寿美子のような経験があるのではないだろうか。友人だと思いながらも、寿美子は心ない言葉や不当な扱いをれいから受ける。れいは両親の離婚後に、一人になった父親の自殺を目の当たりにして、そのことが彼女の心の傷になったと思われる。家族は円満だけど内向的で今一つ自分に自信がない寿美子をはけ口にして、自分のモヤモヤを発散させていたのだろう。思春期の心の揺らぎと複雑な人間関係がリアルに描かれていた。2023/11/15
ネギっ子gen
63
【誰かのことを憎みきらなくていいし、無理に許しきらなくてもいい。自分の感情を頑張って加工しなくていい】友達って何なんだろう、と問う小説。陰口を撒き散らすことでコミュニケーションを取る幼馴染に振り回される。その関係性に違和感を覚え――。<わたしを必要とする場面が何度もあった。そのことにどこか安堵や陶酔を覚えていたことも、否定できない気がして。でもそんなふうに思考を奪われている時点で、私は彼女にとらわれている/悲しみや苦しみも、完全になくすことを目指さなくてもいいのかもしれない>。傷は縮んだ。もうそれで…と。2025/09/12
sayuri
52
胸キュンは封印。随所に毒が散りばめられた青春小説。子どもの頃に遊んだ「花いちもんめ」を思い出す。選ばれた時の高揚感と、最後の一人になりそうな時の不安感。中高生時代は学校こそが全てで一人でいる事は悪の様に感じた。本作に登場する少女達も狭い世界の中であがいている。れいちゃんに悪感情を抱きながらも登下校を共にし距離を取れない寿美子に悶々とし、陰口を撒き散らす事で他者とコミュニケーションを取るれいちゃんに嫌気が差す。本書に登場する『毒友』のフレーズには頷くしかない。甘酸っぱい苺飴の奥に潜む苦味を痛切に感じる一冊。2024/01/11
もぐもぐ
47
中高の閉鎖的な環境の中での煮詰まった人間関係。砂村さんの紡ぐ文章はとっても生々しくて、読んでてしんどかった。他人を見下し毒を吐き続けるれいちゃんに辟易するけど、最後のメールにちょっと切なくなってしまった自分は甘いんだろうか(笑)。寿美子が自分の力で新しい世界に踏み出してゆく姿にほっとしたけど、やっぱりどうしてもれいちゃんのその後の人生が気になってしまう。2025/04/16
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