岩波新書<br> キリストと性 - 西洋美術の想像力と多様性

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岩波新書
キリストと性 - 西洋美術の想像力と多様性

  • 著者名:岡田温司
  • 価格 ¥1,122(本体¥1,020)
  • 岩波書店(2023/11発売)
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  • ISBN:9784004319924

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内容説明

今日,キリスト教は性に対して厳格,保守的であるといわれる.しかしキリスト教の長い歴史にあって,キリストは性をめぐって,じつにさまざまな姿で語られ,描かれてきた.ときに「クィア」と形容される性的嗜好を先取りし,ときにジェンダーをめぐっても攪乱されていく.人々の豊かな想像力が育んだ西洋美術の実相に迫る.

目次

はじめに
I クィアなキリスト
1 キリストとヨハネ
「最後の晩餐」のなかの使徒ヨハネとイエス
イエスとヨハネのツーショット
「イエスの愛しておられた弟子」ヨハネ
師との「愛」をめぐる弟子たちの葛藤──ヨハネとペテロの場合
外典のなかのヨハネ
マグダラのマリアの愛を捨ててイエスのもとに走るヨハネ
カップルにしてライヴァル、似た者同士の使徒ヨハネとマグダラのマリア
ガニュメデスとしてのヨハネ
ソドムの罪
2 イスカリオテのユダとキリスト
ユダは本当に裏切り者なのか
ユダをめぐる解釈の葛藤
外典『ユダの福音書』
イエスとユダのどこかクィアな関係──スコセッシの『最後の誘惑』
もうひとりのユダ──ノーマン・ジュイソンの『ジーザス・クライスト・スーパースター』
ユダはなぜイエスにキスしたのか
ユダのキスのさまざまなかたち
クィアな口づけ
カイン+モーセ+オイディプス=イスカリオテのユダ
もうひとりのユダ
3 マリアとキリスト
娘エクレジアを生む母キリスト
マリア・エクレジアの子宮
花嫁マリアと花婿イエス
ジェンダーをまたぐ「花嫁」
母マリアと子キリストの結婚
II 交差するジェンダー
4 もしもキリストが女性だったら
女性のキリスト──「クリスタ」
十字架のイエスの異性装
ウィルゲフォルティスのモデル──ルッカの《聖顔》の異性装
中世におけるさまざまな異性装
異性装の聖人たち
女教皇ヨハンナ
5 「傷(ウルヌス)」、「子宮(ウルウァ)」、「乳首(ウベル)」
女性器としてのキリストの傷
護符としての女陰と男根
イエスの割礼と包皮
聖遺物としてのイエスの包皮
傷のなかへと入る
豊かな乳房をもつキリスト
「あなたの乳房はぶどう酒にもまして快く」
両性具有としてのキリスト
6 「スピリット」とは何か
「聖霊」のかたち
「聖霊」のジェンダー、男性性と女性性の揺れ
「カリタス」としての聖霊
「ソフィア(知恵)」としての聖霊、あるいは神の女性性
グノーシス主義の「ソフィア」
「聖霊」と聖母マリア
女性としての聖霊
三位一体と聖母戴冠
三位一体を包み込むマリアの子宮
おわりに
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

131
キリスト教の歴史において、性に関する考え方が時代ごとに変遷する様子を西洋美術史から見ていく。ヨハネとペテロの師への愛は同性愛の匂いが強く、母子であるマリアとイエスが結婚する近親相姦的な姿がマリア信仰と共に広まった。十字架上のキリストの傷が女性器のイメージで描かれたり、巡礼者向けバッジのデザインに用いられた。厳格な信仰を強要された中世欧州ですら、現代人も思いつかない多様性に満ちた想像力が存在したのだ。確かに異端的かもしれないが、支配者に認められたきれいごとよりも民衆の下世話な本音がポロリと漏れてしまったか。2024/12/08

trazom

111
西洋美術史学者でキリスト教徒ではない岡田先生の視点は、いつもとてもユニーク。イエスとヨハネ、イエスとユダがクィアな関係にあったとする作品が紹介される。更に、両性具有としてのキリスト、キリストの女性形であるクリスタ、女教皇ヨハンナ、聖霊は男性か女性かなど、絵画作品には、キリスト教における多様な性が表現されている。多くが外典に依拠しており、キリスト教の正統ではないが、逆に言えば、こういう多様なジェンダーを異端として排除し、男性中心でミソジミーの教理に純化してきたのがヴァチカンの歴史だったのだと思えてくる。2025/01/25

rico

80
ダビンチの「最後の晩餐」、どう見てもヨハネが女性に見えるんだけど・・・、と思ってたら、そんな事例はマイナーながらも美術品として結構残っているようで。他にもユダのこととか、男性中心主義にもかかわらずマリアの位置付けがどんどん重くなっていくこととか、大ぴらには語れない、ちょっと生々しいものが、「異端」として排除されつつも、人の想像力がそちらに向かっていくのを阻止できなかったんだなあ・・・、と妙に感心してしまう。頭が三つついた「三位一体」像のインパクト!楽しい、と言ったら語弊があるけど・・・。2024/12/19

Nobuko Hashimoto

25
『西洋美術とレイシズム』『アダムとイヴ』がすごく面白かったので。本書は、キリスト、マリア、弟子たちがどう描かれていたか図版を示しながら解説する。基本、キリスト教は男性中心主義、性には厳しいとみなされるが、中世からルネサンスあたりの絵画や彫刻などを見ると、なかなかに際どい性的な表現が多いことがわかる。イエスと弟子が密着しすぎだったり、母と息子が逆転したような構成だったり、イエスの負った傷の形に別の意味を持たせたり。いやいや今回も面白かった!!2025/06/19

ラウリスタ~

14
これは面白い!男性中心的で性に厳格というイメージのキリスト教だが、その中に隠れて?性のモチーフは絵画などで描かれてきた。最後の晩餐で横に座るヨハネはキリストに最も愛された弟子と自称し、女性疑惑(ダンブラウン)や同性愛っぽさもある。もっと面白いのはユダ。兵士に引き渡す時のイエスへの接吻をめぐって、ユダは裏切り者ではなくイエスを十字架に送ることで使命を果たしたと言った再評価も。後半はずっと聖母マリア、ここが白眉。父と子と精霊の三位一体というホモソーシャルに、マリアが精霊と同一視されることで割り込み凌駕していく2024/05/15

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