内容説明
パースの知られざる宇宙生成の哲学.機械論的世界観を超え,現代の宇宙論に接近するその宇宙の描像を,論理学的・数学的探究と詩的・宗教的想像力の両面から立体的に再構成する.進化論的で多宇宙論的なヴィジョンに結晶した最も美しい算術のシステムへの憧れ──「早すぎた」知性の夢を追う.
目次
プロローグ ヴィジョンとしての多宇宙論
第一章 エマソンとスフィンクス――「喜ばしい知識」の伝道師
第二章 一、二、三――宇宙の元素
1 ケンブリッジ・プラトニズムの影
2 パースのキャリア
3 宇宙の元素
第三章 連続性とアガペー――宇宙進化の論理
1 進化論的宇宙論の中心課題
2 連続体のなかを泳ぐ
3 創造する愛/形成する愛
第四章 誕生の時――宇宙創成の謎
エピローグ 素晴らしい円環
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
3
命題、述語、様相という論理の順序を様相から逆行させるパースは、偶然、連続、アガペー(無限の愛)の三項を新たに創出し、グラフ理論とトポロジーで過不足ない関係として規定する。ここから、不確定性の中で「閃光」が起こって宇宙が形成されるのか、宇宙は偶然が起こる可能性を不確定性としてどのように含むのか(連続体とカントール集合論の濃度問題の発展)。そしてその進化と終焉はどのようなものか(神なしのアガペーとしてのダーウィン的進化)、という3つの問いが導出される。エマソンの影響と福沢、透谷、大拙らへの影響にも触れられる。2017/08/25
鴨長石
1
パースはまだ読んだことがなく、論理学の大家ということぐらいしか知識がなかったが興味を持っていた。パースがかなり大きく取り上げられている『偶然を飼いならす』(イアン・ハッキング)を読んだのとほぼ同じタイミングで本書を知り、手に取る。ほぼ観測データもない時代に、現代にも通じる宇宙論をパースが打ち立てていたとは知らなかった。第一性・第二性・第三性など、こうしてまとめられてみると、確かにそうだなと納得できるが、一体どのように思いつくのか。本書でも言及されたエマソンなどの先人はいるにしろ、その発想力はとんでもない。2020/12/31
hisajun
1
☆☆☆★★(後半ちょっと難しくなるけど基本的にはエッセイとして読める感じ。パースの先達からの哲学的な影響関係とかが分かって面白かった)2009/09/06