内容説明
男達は「家造り」を小説に書き続け、女達は「家出」ばかり書いてきた。近代150年の小説群を「家」で読み解いた、破天荒な文学史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Inzaghico (Etsuko Oshita)
8
今、アメリカの「郊外」の発展について書かれた『サバービアの憂鬱』を読んでいる。そこにアメリカでも持ち家が推奨されたのは第二次世界大戦後だとあり、驚いている。日本もかつては借家がデフォルトで持ち家のほうが少数派だった。 副題の「『私』のうつわの物語」が、入れ物としての「家」をよく表している。うつわは時代によって変幻自在に変わっていく。木造から鉄筋コンクリートという建築材の変化に伴い、移動の身軽さも減ったのかもしれない。 これを読んで小島信夫の『抱擁家族』シリーズが読みたくなった。2024/04/19
Peter-John
1
冒頭に「近代百三十年のあいだに日本語で書かれた大量の文学作品を一つのテキスト、集団制作による大河小説として連続して読むことはできないだろうか」という大きな志のもとに、「借家」「持ち家」という器や、いろり端のある家や茶の間のある家が器である「大家族」、マンションなどのリビングルームのある家が器である「核家族」、nLDKのnが1であるワンルームマンションのひと部屋が器である「シングル」というような、家の構造とそのなかに住む人たちにパースペクティブを据えた解釈学的力作であり、まさに目から鱗。すごい作品だ。2025/03/09
Fumoh
1
戦前から2020年代にかけて、「家」の思想の変遷を抽出していった異色の文学史。日本人といえば「家」と言っていいくらい、「家」は特異な概念である。戦前、地方のお屋敷の、責任やルールに縛られた「憂鬱さ」から、都会の借家にまつわる奇妙な「人物関係史」、戦後にかけて目立ってくる公営住宅・夢のマイホーム――「家庭」から「部屋」といったように、段階的な離散を経ていく日本を、文学者たちはどう描いたのか。著者の研究は幅広く、かつ緻密であり、また肩ひじ張ったところがなく、エッセイのように読むことができる。2023/12/01
よっちん
0
研究室2024/04/10
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