内容説明
「為政者に都合の悪い政治や社会の歪みをスポーツを利用して覆い隠す行為」として、2020東京オリンピックの頃から日本でも注目され始めたスポーツウォッシング。
スポーツはなぜ“悪事の洗濯”に利用されるのか。
その歴史やメカニズムをひもとき、識者への取材を通して考察したところ、スポーツに対する我々の認識が類型的で旧態依然としていることが原因の一端だと見えてきた。
洪水のように連日報じられるスポーツニュース。
我々は知らないうちに“洗濯”の渦の中に巻き込まれている!
「なぜスポーツに政治を持ち込むなと言われるのか」「なぜ日本のアスリートは声をあげないのか」「ナショナリズムとヘテロセクシャルを基本とした現代スポーツの旧さ」「スポーツと国家の関係」「スポーツと人権・差別・ジェンダー・平和の望ましいあり方」などを考える、日本初「スポーツウォッシング」をタイトルに冠した一冊。
第一部 スポーツウォッシングとは何か
身近に潜むスポーツウォッシング
スポーツウォッシングの歴史
スポーツウォッシングのメカニズム
第二部 スポーツウォッシングについて考える
「社会にとってスポーツとは何か」を問い直す必要がある ――平尾剛
「国家によるスポーツの目的外使用」オリンピックのあり方を考える ――二宮清純
テレビがスポーツウォッシングを報道しない理由 ――本間龍
植民地主義的オリンピックは<オワコン>である ――山本敦久
スポーツをとりまく旧い考えを変えるべきとき ――山口香
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こも 零細企業営業
27
資本主義も社会主義もスポーツを使ってプロパガンダに使う。資本主義は金のタメ。社会主義は国威発揚と世界のアピールのため。個人では、ヨーロッパやアメリカの選手達は人権侵害に対して世界に向けてアピールするが、日本の選手は女子サッカーの選手がW杯でしたくらいで全くしないのは何故なんだろうか?東京オリンピックでは残ったのは負のレガシーだけなのに検証もしないのは何故なんだろうか?その辺りの事が様々な人にインタビューした記事が後半に載っている。最後の参考文献、読んだ事のある本が多数載っていた。2023/11/17
遊々亭おさる
16
カタールで行われたサッカーのワールドカップの会場建設は南アジアから出稼ぎにやってきた人々が奴隷労働を強いられた末に多数の死者を出しながら完成した。大会は世界中のファンを興奮と感動の渦に巻き込み大成功を納める。スポーツの感動を国が政治利用して闇を覆い隠し、国威発揚や懐に銭を溜め込むための道具として扱われる。日本で顕著なアスリートは政治に口を出すな問題。アスリート個人の背景やメディアやスポンサー企業の体質の問題も本書で解説されているが、これを嫌う人々は民主主義に反旗を翻してるような。芸能人もよく言われるよね。2024/01/20
うつしみ
8
日本人アスリートは純粋培養され過ぎていて政治的メッセージを避ける傾向にある。日本の観客もスポンサーもマスコミも、選手にスポーツ馬鹿である事を求める傾向がある。そんな話が繰り返し問題視されそれだけで終わってしまった。それは日本人論的な話であって、そもそも問題なのかどうかすら意見が分かれる所だろう。スタジアム建設に関わる奴隷労働とか、独裁国家がスポーツを利用しどんな批判を交わそうとしているのかとか、スポーツウォッシングの巨悪の部分をもっと掘り下げてほしかった。最後までSWという言葉が上滑りしてる感が拭えず残念2023/12/27
K
3
品位方正じゃないと叩かれるアスリートは大変だろうなぁ。2023/11/25
Kazuo Ebihara
1
国家や政府、企業にとって不都合な事象をスポーツを利用して覆い隠す行為をスポーツウォッシングという。前半でスポーツウォッシングの歴史と、そのメカニズムを明らかにした。後半で二宮清純氏、山口香氏ら5人の識者と議論がされた。・未総括の東京オリンピックの問題点。・国家によるスポーツの目的外利用の実態。・日本のテレビ局がスポーツウォッシングを報道しない理由。・日本の選手が人権問題等について意見を語れないのは何故か。・スポーツは国家の枠組みから逃れられないのか。元柔道家山口香氏の課題認識が小内刈りのように鋭かった。2023/12/10