内容説明
明治時代の湘南といえば、大磯だった! この地には、明治20年代後半から、伊藤博文、大隈重信、陸奥宗光などの大物政治家や、岩崎弥之助など経済人が別荘を建て、そこを目指して多くの人が集まるようになった。また大磯は、日本初の海水浴場として、老若男女が集う一大リゾート地だったのである。本書は、この地をこよなく愛し、後に宰相となる少年・吉田茂と、謎の隣人・天人(あまと)の二人が、別荘地で起きる様々な事件を解決していく連作活劇ミステリー。茂が少年時代を過ごした吉田家の別荘は、父・健三によって「松籟邸」と名付けられていた。一方、隣人・天人が住んでいたのは、瀟洒な洋館。アメリカ帰りとも思えるこの若者は、一体何者なのか。そんな天人によって人間性を育まれた茂は……。『天離(あまさか)り果つる国』で注目を集めたエンタメ作家が、虚と実を巧みに織り交ぜて紡ぎ出した「明治浪漫」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
124
少年吉田茂が奇妙な隣人と関わったおかげで怪事件に巻き込まれるストーリーは、実在の著名人が相次ぎ登場するなど明らかに山田風太郎の明治物に倣っている。表向きは落ち着きを取り戻したかにみえる明治中期の大磯でブルジョア生活を送る吉田だが、アメリカ帰りの隣人に導かれるように、まだ維新の敗者の傷は癒えず報復の機会を窺っている事実を教えられていく。未来の大宰相が初めて宰相学を学ぶ姿は教養小説の変種であり、その点は山田作品にない新しさだが、吉田が十代という設定のせいか明るいジュブナイル小説を読んでいる感じが拭えなかった。2024/01/15
Atsushi Kobayashi
23
吉田茂のころの時代の話がないので、興味津々です。 大磯もう1回行かなきゃと思う次第です。 残念なのが、次巻がでるのがずーっと先。はやく続きがみたいです。2023/11/27
信兵衛
21
時代は明治、まだ幕末の気分や当時の怨念を未だに引きずる人間もいて、そうした処から事件が起きたりもします。 また、大磯という場所、維新の元勲、実業家といった貴顕たちが多く別荘を構えていることから、歴史上の有名人物たちが次々と顔を見せ、それによるゴタゴタもある、といった次第。 そうした舞台設定であるからこそ、本ストーリィ、すこぶる面白い、という訳です。2024/01/21
そうたそ
13
★★★☆☆ 歴史小説や時代小説のイメージが強い著者だが、本作は少年時代の吉田茂が様々な事件に直面する様を描いた一風変わった作。謎の隣人・天人の存在も魅力的で、史実とフィクションのバランスが絶妙。知っている偉人の名が次々登場するのも面白い。事件は起こるが、ミステリというよりは青春活劇と言うべきか。全三巻予定とのことだが、今度吉田少年はどこまで成長していくのか楽しみなところ。2024/02/29
このみ
6
藤沢から陸蒸気に乗って大磯の停車場へ。吉田家別邸である松籟邸へ向かう齢十二の若き当主、吉田茂。大磯は明治初期より政財界の別荘が多く建てられ「政界の奥座敷」といわれた地。この風光明媚な「こゆるぎ」の地を舞台に、利発な茂少年と奇妙な隣人、天人(あまと)シンプソンの冒険活劇。明治の偉人たちも多数登場。輝く海と海岸の松林、絶えぬ波音、と夏の描写が爽やかで、青春の溌剌の中にいる茂少年との呼応がまたよい。三部作とのこと、次作が楽しみだ。大磯という場所の魅力が詰まっている。新杵の西行饅頭も登場して嬉しい。2024/11/17
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