文春e-book<br> 神と黒蟹県

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文春e-book
神と黒蟹県

  • 著者名:絲山秋子【著】
  • 価格 ¥1,900(本体¥1,728)
  • 文藝春秋(2023/11発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784163917757

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内容説明

架空の県を舞台にした連作小説集

「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
 つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

bura

158
人間の営みを体験する神の物語を8篇の連作で描く。黒蟹県というとても地味で箱庭の様なフィールドの中で様々な人間達の人生が進んでいく。そこで一緒に過ごす人間になった神の様々な「気づき」がとても面白く豊かな世界を紡ぎ出している。作者の視点が正に神様の様に人間の突拍子もなく微笑ましい行いを愉しんで綴っているのだ。これが流石である。終章の「神と提灯行列」がとても愛おしく、心に残る読後感を与えてくれた。絲山文学の良作である。2024/01/08

ちょろこ

143
沁み込む一冊。すごく好みの世界観だった。舞台は架空の地、どこにでもあるような「黒蟹県」。この現実と架空の絶妙な交わりに深く考えずに身を委ねられた至福の時間。元から暮らす人、移住し新しく住まう人たちのなんてことはない姿を描いていくだけなのに、なんだろう、スッと沁み込んでいく感じがすごく好き。ふわっと舞い降りる神なる存在も神の視点もじわりと沁み込む数々の言葉もめちゃくちゃいい。これぞ人たるものの姿が絶品で何度も共感し、最後はたまらない愛おしさが溢れる感覚に陥ったほど。人間でいるのも悪くないよね、なんて思えた。2024/03/23

みっちゃん

143
地名は勿論、方言、植物、名産物まで作者の造形。架空の県、黒蟹県。でも、どこにでもありそうな処、そして住まいする人々も。力が抜けて可笑しみのある文章(特にP128還暦前後の男性の様々な喩えには申し訳ないけど、大笑い)から浮かび上がるのは、人生半ばを過ぎて、これまでの来し方への少しの後悔と諦め、でも生きとし生けるものへの穏やかで優しい眼差し。「いとおしき日々だった」ちょいちょい人間界に降り立ち、ひとと関わり触れあう妙に人間くさい神様がこれまた良い味を出している。2024/02/24

hirokun

128
星3 普段読まない芥川賞作家の作品。仮定の県、黒蟹県を舞台にして、日常の生活の中にある当たり前の出来事の中に意味を見出すことをテーマにした作品?全知全能ではない人間味を持った紙が登場するが、この中にも日本人の宗教観が表現されているのか?小学校時代から国語の成績の良くなかった私にとって、すべて『?』のついた感想になってしまった。難しい文章ではないのだが、読解力のせいか正直よく理解できない作品であった。他人の書評を参考に理解を深めたいと思う。2023/12/11

121
「兄は自由人である。ロックバンドのサーポートメンバーとしてドラムを叩くこともあるが、それ以外は各地のイベントでカキ氷を売ったりクレープやケバブを焼いたりしているようだ。ときどき中南米や南太平洋の国に旅行をして意味不明なお土産とともに帰ってくる。住所不定無職というやつである」ドラム、ケバブ、中南米、住所不定・・・絲山秋子さんの自由人て、やっぱりハードルすごく高い !2025/02/03

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