内容説明
著者は天然記念物並みに希少な全国に20人程度しかいない現役の刑務所管理栄養士。知られざる刑務所の給食事情を、笑いありホロリありのエピソードを交えて紹介する。クサくないメシづくりをめざして調理経験ゼロの受刑者たちと奮闘する日々を描く炊場ドタバタ実録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
108
医療刑務所で栄養士として働く著者。受刑者が食事を作るための指導や献立の他経験を元に書かれている。刑務所で食事が一日で一番楽しみだと他の本で読んだことがある。変化に乏しい刑務所生活の中で唯一毎日変化のあるから。刑務所も時代とともに変化しているようで、受刑者を「さん」づけで呼ぶようになってきたという。税金を使って罪を犯した人にイイ食事を食べされるなんてという声があると思う。しかし「さん」づけで呼ぶことのように食事に人の温かみも必要ではないかと感じた。ちょっとしたことで累犯者が減ってゆけるといいなあ。2024/10/26
R
102
刑務所に務める栄養士が見た刑務所内をつづった本。当然、出てくるのは受刑者なのであるが、その罪をという部分ではなく、人間そのものと刑務所という空間でどのように生活がなされているかのレポートのようでもあり、大変興味深い文章だった。刑務所では受刑者たちで食事を作っているそうで、その指導であったり、メニューを考えたりという仕事をしているのだが、悪ガキの多い学校のような雰囲気すらある内容と、規律の厳しさ、食材を平等に分けるという重責の話が大変面白かった。更生について、少しばかり考える機会となる一冊だと思う。2024/04/08
ナミのママ
99
未知の世界をワクワクしながら読んだ。刑務所の食事ってどうなっているんだろう?著者は他の職場も経験したベテラン、2012年から男性刑務所専属管理栄養士となった。料理酒やみりんが使えない制約、個数グラム等全て平等が基本、1人1日520円の予算、その中で日々奮闘している。何よりも料理を作るのは男性受刑者。「玉ねぎはみじん切りにしましょう」の指示に「玉ねぎの皮はむくんですか」そんな感じで爆笑に次ぐ爆笑。でもなんだか可愛い。レシピも少数掲載の本書、知ってもらう啓蒙の意味でも意味あるエッセイ。2023/11/25
J D
96
刑務所で働く管理栄養士の奮闘と受刑者への思いや関わりを描いた作品。普段は、覗けない刑務所の台所をユーモラスに語られ、引き込まれる。「湯気のたつ食事を食べたい」という受刑者の言葉が印象に残った。温食給与に努めながらもやはり限界はあるのだろう。刑務所にいるんだから食べられるだけでも感謝しろという時代ではない。読む人の立場で感想も読後感も大きく異なるだろう。ぜひ、多くの人に読んで欲しいと思った。なかなか、レアな作品だと思います。2023/12/09
けんとまん1007
92
確かに、知らない世界。毎日の給食を、受刑者の人たちが作っているということ、管理栄養士さんがいるということ。確かに、食事すること、栄養価を考えた献立であることは、何よりも命を、そして、心を養う根源である。食事だけでなく、ものを作ること自体の意味は、大きなものがあると思う。それが、食であれば、尚更のことではないだろうか。大きな制限の中(ルール、予算面など)で、絶えず、工夫しながら取り組んでいらっしゃ姿が素晴らしい。炊事担当の受刑者も含め、時に、生徒・こどものように思われるのは、何となく頷けるし、微笑ましい。2024/09/22