内容説明
著者は天然記念物並みに希少な全国に20人程度しかいない現役の刑務所管理栄養士。知られざる刑務所の給食事情を、笑いありホロリありのエピソードを交えて紹介する。クサくないメシづくりをめざして調理経験ゼロの受刑者たちと奮闘する日々を描く炊場ドタバタ実録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
93
未知の世界をワクワクしながら読んだ。刑務所の食事ってどうなっているんだろう?著者は他の職場も経験したベテラン、2012年から男性刑務所専属管理栄養士となった。料理酒やみりんが使えない制約、個数グラム等全て平等が基本、1人1日520円の予算、その中で日々奮闘している。何よりも料理を作るのは男性受刑者。「玉ねぎはみじん切りにしましょう」の指示に「玉ねぎの皮はむくんですか」そんな感じで爆笑に次ぐ爆笑。でもなんだか可愛い。レシピも少数掲載の本書、知ってもらう啓蒙の意味でも意味あるエッセイ。2023/11/25
J D
88
刑務所で働く管理栄養士の奮闘と受刑者への思いや関わりを描いた作品。普段は、覗けない刑務所の台所をユーモラスに語られ、引き込まれる。「湯気のたつ食事を食べたい」という受刑者の言葉が印象に残った。温食給与に努めながらもやはり限界はあるのだろう。刑務所にいるんだから食べられるだけでも感謝しろという時代ではない。読む人の立場で感想も読後感も大きく異なるだろう。ぜひ、多くの人に読んで欲しいと思った。なかなか、レアな作品だと思います。2023/12/09
R
73
刑務所に務める栄養士が見た刑務所内をつづった本。当然、出てくるのは受刑者なのであるが、その罪をという部分ではなく、人間そのものと刑務所という空間でどのように生活がなされているかのレポートのようでもあり、大変興味深い文章だった。刑務所では受刑者たちで食事を作っているそうで、その指導であったり、メニューを考えたりという仕事をしているのだが、悪ガキの多い学校のような雰囲気すらある内容と、規律の厳しさ、食材を平等に分けるという重責の話が大変面白かった。更生について、少しばかり考える機会となる一冊だと思う。2024/04/08
ミナミハハ
66
読メで知った一冊。著者が管理栄養士として働く刑務所「炊場」での日常。賛否両論を覚悟しながらも、刑務所の中の出来事をもっと一般の人に知られても良いのでは?との思いから出版された。著者の専門職としての熱量を感じ、知らない世界を知る事が出来ました。2024/01/30
遊々亭おさる
30
少ない予算とがんじがらめの規則で不味いメシになりそうなところを質素だけれど栄養満点で旨いメシに変えるのは管理栄養士と刑務官、そして受刑者たちが悪戦苦闘しながら創意工夫を重ねる日々の積み重ね。医療刑務所の管理栄養士が綴るメシ作りのおもしろエピソードと塀の中の面々が見せる顔。失敗が懲罰に繋がる環境なので真面目にする以外にはないが、彼らが調理に取り組む姿勢は失敗しながらも仕事を真面目に楽しんでいるように見える。環境が整えば良き働き手になる一例になるか。再犯率が下がれば被害者も減る。第三者は罪を憎んで人を憎まず。2024/01/14