内容説明
人間の欲を浮き彫りにする社会派ミステリー。
「工場はおそろしい水銀の水を流している。魚は獲ってはいけない。獲った魚を喰えば死の病いにとりつかれる。
そうだ、この海……この暗い海の底から、目に見えない何ものかが牙をむいて迫っている」
不知火海沿岸で発生した奇病“猫踊り”。魚や貝を食べると、猫はもちろん、人間までも前後不覚になり死んでしまう恐ろしい病気だ。その実態を調べるために東京の保健所から来た男が行方不明になる。警察医・木田民平は勢良警部補とともに、工場や投宿した旅館などを探るが、男はやがて鴉についばまれた死体で発見される。
男はなぜ殺されなければならなかったのか。そこには、さまざまな“欲”が、複雑に絡み合っていた――。
日本中を震撼させた水俣病を題材にし、直木賞候補にもなった衝撃作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
5
1960年単行本、23年11月復刊。水俣病を題材にしたミステリーで、著者の名を広く知らしめた一作です。この頃の作品は社会派ということで松本清張と語り口がよく似ています。ミステリーとしてはやや粗さもある感じですが、著者の主題はそこではないのでしょう。作品中で水俣は「水潟」という地名で出てきますが、この5年後に新「潟」県で第二水俣病と呼ばれる同種の公害病が確認されることを思うと背筋が寒くなるものがあります。2023/11/21
mayhaha160
0
水俣病を題材とした社会派ミステリー。当時は南九州の漁村で発生した奇病としか思われていなかった水俣病。 昭和30年代、豊かなのは都市の最上辺の層のみで地方はまだまだ貧しかった。そんな時代 水銀を海に垂れ流していた化学工場は罹患した漁民を切り捨てる。 水上勉は水俣市に取材に赴き『不知火海沿岸』を著しこれを長編化して本作を上梓した。 そして2年後 満を持しての『飢餓海峡』。これは1965年三國連太郎主演で映画化されている。名作です。 本作も映画になったら面白かったと思う。2026/04/14
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