内容説明
江戸、千駄木町の一角は心(うら)町と呼ばれ、そこには「心淋し川」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛が囲っている年増で不美人な妾のおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだし…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな唄声を聞く。荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が捨ててしまった女がよく口にしていた唄だった…(「はじめましょ」)など、生きる喜びと哀しみが織りなす全六話。第164回直木賞受賞作。
目次
心淋し川
閨仏
はじめましょ
冬虫夏草
明けぬ里
灰の男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミワ
89
時代物は何となく敬遠していたけど、読みやすかった。時代が違っても人の想いに大きな違いはない。「冬虫夏草」は今で言ったら毒親?。母の想いが怖い。P44茂十さんの(誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方が…)の言葉が「灰の男」で納得。「灰の男」が心に沁みる。そういう事で茂十さんも流れ着いたんだ。解説も含めて良かった。2024/03/10
しげ
84
北海道出身作家(河崎さん)の直木賞受賞の吉報が昨日届きました。同じく道産子で3年前に同賞受賞者した西條奈加を読書中でした。時代小説への苦手意識から西條さん初読みとなりましたが見事に先入観を覆えされた感じです。本編に描かれる心町(うらまち)は何故か幼少を過ごした昭和時代の団地住まいを思い出します。差配茂十の章で結ばれるラストはとても良かった。2024/01/20
ばう
76
★★★★江戸、千駄木町の一角を流れる心淋し川の流れは淀み、まるでそこに暮らす人々のようだ。そこに暮らす人々を描いた連作短編集。その淀んだ川と同じように心の内に様々な澱を抱えた人達の話だけれどどの話も最後は希望が見えるようでどれも読後感が爽やか(「冬虫夏草」の話以外は)。中でも差配の茂十の話が良かった。辛い過去が有りながらも彼のこれからが明るく思えて私まで救われた気持ちになれた。傍目にはとても良い町とは言えないけれど、それでも力強く毎日を生きている人々の逞しさのようなものも感じられる一冊でした。2026/01/02
shinchan
71
西條さん初読み。ほとんど時代小説を手にしない私ですが、直木賞受賞作と言う事で読んでみました。『うらさびしがわ』と読むんですね。文庫本の表紙の絵に描かれている川は綺麗ですけどね、、、、、、、、。2023/12/19
sin
67
男はいつまでたっても子供だと言われるけども…表現の仕方は違えども子の時は母に甘え、大人になれば女性に甘え、あわよくば社会に甘える。仕方がないのだろうか?人は養われないと生きてはいけないように産まれ来る生き物だから…一方女性は母になることで否応なしに大人へと羽化するようだが、例え母とならずとも社会のしくみに枷をはめられ大人しくさせられる。程度の差こそあれ今も昔も変わらない人間の物語に人の情とか優しさよりも、大袈裟だとは思いつつも今に至るも大人になれない人類と云う種のもどかしさを感じる。2024/05/24




