講談社学術文庫<br> ドラキュラ・シンドローム 外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝

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講談社学術文庫
ドラキュラ・シンドローム 外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝

  • 著者名:丹治愛【著】
  • 価格 ¥1,441(本体¥1,310)
  • 講談社(2023/11発売)
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  • ISBN:9784065338308

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内容説明

急成長を遂げた周辺国からの侵略恐怖、増加する貧窮移民の不安、友好国へのぬぐいがたい不信、新たな感染症の脅威……「ドラキュラ」の恐怖と魅力の源泉には、黄昏を迎えた大英帝国の外国恐怖症があった。ゴシック・ホラーの金字塔に織り込まれた、ヴィクトリア朝イギリス社会の闇を描き出す!

世界でもっとも有名な吸血鬼「ドラキュラ」。
数ある吸血鬼作品のなかでも特権的な地位を得て、現代に至るまで映像化が繰り返され、日本では吸血鬼の代名詞にもなっています。
そのドラキュラの恐怖と魅力の源泉には、19世紀末イギリス社会に蔓延する深刻な外国恐怖症がありました。
「太陽の沈まぬ帝国」、「世界の工場」と謳われた栄光は過ぎ去り、軍事・経済ともに急成長を遂げつつある周辺国からの侵略恐怖、増え続けるユダヤ人など貧窮移民への不安、搾取してきたアジアの植民地から入ってくる新たな感染症の脅威……。
落日の大英帝国に生きる人々は心の奥底で何を恐れ、そしてドラキュラは生みだされたのか。
『パンチ』などに掲載された風刺画をふんだんに使いながら、ゴシック・ホラーの金字塔から読み解く世紀末ヴィクトリア朝の社会!

 イントロダクション
第1章 ドラキュラの謎
第2章 ドラキュラの年は西暦何年か
 帝国主義の世紀末
第3章 侵略恐怖と海峡トンネル計画の挫折
第4章 アメリカ恐怖と「栄光ある孤立」の終焉
 反ユダヤ主義の世紀末
第5章 ユダヤ人恐怖と外国人法の成立
第6章 混血恐怖とホロコースト
 パストゥール革命の世紀末
第7章 コレラ恐怖と衛生改革
第8章 瘴気恐怖と細菌恐怖
おわりに――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究
増補 もうひとつの外国恐怖症――エミール・ゾラの〈猥褻〉小説と検閲
学術文庫版あとがき
引用史料一覧

コラム
吸血鬼の系譜/シャルコーの催眠術/一八九三年一〇月二日のピカディリ・サーカス/ダイヤモンド・ジュビリー/火星人/海峡トンネル・パニック/ベアリング銀行の投機失敗/ロスチャイルド一族の結婚/ロンドンとテムズ川の汚染……ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

118
自らを先進国と誇っていた国が、他国に追い上げられて危機感を覚える例は珍しくない。現在の欧米諸国も国力衰退と移民急増への反感から右翼ポピュリズムが国民の心を摑んでいるが、19世紀末の大英帝国も同じ状況にあった。独仏との対立と貧しいユダヤ人移民の流入が、東方からの厄災で自国が没落するのではとの不安を煽っていたのだ。『ドラキュラ』は単なるホラー小説ではなく、当時の英国民に蔓延する外国恐怖症を吸血鬼として具現化したとの見方には強い説得力を感じる。ただ、作者のストーカーは英国の植民地だったアイルランド出身なのだが。2024/01/26

HANA

73
滅茶苦茶面白い。ドラキュラという小説を通して、世界帝国として君臨していたヴィクトリア朝大英帝国、それが内包する植民地経営の裏返しとしての外部からの不安を明らかにした一冊。それぞれフランスとドイツ、ユダヤ人、疫病と章分けされて分析されているのだが、それらが英仏海底洞窟やロシアから逃れてきたユダヤ人、そしてコレラと細菌といった当時の状況も絡めて明らかにしていく様はまさに快刀乱麻、読んでいるこちらの知的好奇心がどんどん刺激されていく様。逆に言うとドラキュラという小説が名作なのも証明されているようにも思える。2024/01/18

kei-zu

27
これは楽しい。「ドラキュラ」映画は一時期随分見たのだけれど、トランシルヴァニアとロンドンの距離感が不明で。「吸血鬼ノスフェラトゥ」では船旅の描写があるが、作品によってはロンドン郊外にあるようにも感じられる。なんでわざわざ東欧から?物語がまどろっこしくなるだけじゃないの?と思っていたのですが、本書での説明にはなるほどです。「外部」からの脅威(国力の低下、伝染病、ユダヤ人など)」「英国が国外に与えている脅威の自覚」などの指摘に膝を打つ思い。ブラム・ストーカーの原作は未読なのですが、気になってきました。2024/02/11

佐倉

19
フランスやドイツの軍事的脅威、東欧から来るユダヤ移民、インドから来るコレラ⋯『吸血鬼ドラキュラ』が夜に送り出された世紀末英国にあった他者への恐怖と作品への影響を多角的に取り上げた1冊。高い鷲鼻と青白い肌という風貌にストーカーがマネージャーをしていた役者ヘンリー・アーヴィングが演じたシャイロック(つまりユダヤ人のイメージ)の影響を読み取ったり、精神病院の患者レンフィールドがアメリカの社会情勢について饒舌に語りだすシーンの背景(ベネズエラ共和国を巡る対立)、作中の地名とスラム街の関係など作品の背景が知れる。2026/04/17

組織液

16
吸血鬼文学の評論として手に取りましたが、実際には『ドラキュラ』を通して世紀末ヴィクトリア朝を俯瞰した一冊でした。アメリカ人のモリスに、当時のイギリスが抱いていたアメリカへのアンビバレントな感情がこれほど投影されていたのか…。個人的に本書の白眉だと思った点は、イギリス国内の衛生改革が、帝国主義政策と同一のイデオロギーにより推進されていたという指摘です。問題は「外国人への不安」ではなく、対象が何であろうと「不安による排除」を肯定するなら、当然の帰結としてあらゆる排外主義に繋がなるということなんでしょうね。2026/01/15

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