講談社学術文庫<br> デパートの誕生

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講談社学術文庫
デパートの誕生

  • 著者名:鹿島茂【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 講談社(2023/11発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065339657

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内容説明

劇場のように華やかな装飾。高い天窓からふり注ぐ陽光。シルクハットで通勤するしゃれた従業員。乗合馬車で訪れる客を待つのは、欲望に火を付ける巨大スペクタクル空間!
帽子職人の息子アリステッド・ブシコー(1810-1877)と妻マルグリットが、様々な施アイデアで世界一のデパート「ボン・マルシェ」を育て上げた詳細な歴史を、当時を描く仏文学作品や、19世紀初頭のデパート商品目録など稀少な古書から丹念に採取。
パリの世相や文化が、いかに資本主義と結びつき、人々の消費行動を変えていったのか、
仏文学者にして古書マニア、デーパート愛好家の著者だから描けた、痛快・ユニークなパリ社会史!


内容紹介)
客の目をくらませてしまえ!世界だって売りつけることができるだろう!

「白物セール」のときには、それぞれの売り場が白い生地や商品だけを優先的に並べたばかりか、上の階の回廊や階段の手擦りを白い生地で覆いつくし、造花も白、靴も白、さらに家具にも白のレースをかぶせるなど、全館をすべて白で統一し、
1923年の「白物セール」では、「北極」というテーマに従って、アール・デコ調にセットされたシロクマやペンギンが、ホールに入った客を出迎えるようになっていた。
ようするに、ブシコーにとって、店内の商品ディスプレイは、〈ボン・マルシェ〉という劇場を舞台にして展開する大スペクタクル・ショーにほかならなかったのである。
  ――第二章「欲望装置としてのデパート」より

*本書は『デパートを発明した夫婦』(講談社現代新書 1991年11月刊)に「パリのデパート小事典」を加筆し、改題したものです。

目次

まえがき
第一章 ブシコーとデパート商法
昔の商店/買い物はいやいやするもの?/マガザン・ド・ヌヴォテの登場/社会的条件の整備/ウィンドー・ショッピングの快楽/ブシコー青年、パリに上る/衝撃の出会い/マガザン・ド・ヌヴォテの新商法/何も買わずに出られない/現金販売と直接仕入れ/ブシコー、〈ボン・マルシェ〉の経営者となる/薄利多売方式の採用/流行を自らの手で作りだす/大企業の論理/バーゲン・セールの発明/「ニッパチ」をどうするか/「白」の展覧会――大売り出しの始まり/大売り出しの年間スケジュール/「目玉商品」というコンセプト/値引き合戦の軍配/「誠実」が最高の商品――返品可
第二章 欲望喚起装置としてのデパート
巨大店舗の建設/スペクタクル空間の創造/光り輝くクリスタル・ホール/ブシコーの魔法にかけられて/万国博覧会とデパート/商業のカテドラル/演出された大混雑/人の流れを支配せよ!/商品のオペラーーディスプレイ/客の目をくらませてしまえ/女の征服/賢い主婦の買い物/いい買い物をしたという充実感/贅沢品の誘惑/万引きを誘発するデパート
第三章 教育装置としのデパート
ライフ・スタイルの提唱/欲望の掘り起こし/〈ボン・マルシェ〉学校/ヴァカンス教育/ステイタス・シンボルとしての子供/子供の夢の国/「広告」という教科書/〈ボン・マルシェ〉アジャンダ/ピンク・ページの情報戦略/アッパー・ミドルをめざせ/景品による子供の教育/新聞記事の活用/万国博の利用/読書室による集客戦術/文化戦略の始まり/従業員によるクラシック・コンサート/「下部構造」への配慮ーーサニタリー・スペースの充実/無料のビュッフェ/カタログによる通信販売/総売り上げを上まわる通販の伸び率/とにかく、商品を見せてしまえ/デパートを発明した夫婦
第四章 管理の天才、ブシコー
独立売り場制/商品の到着/ゲルト制度/弱肉強食の世界/店員の理想像と本音/新しい労使関係/マニュアル化された店員教育/「会計に行く」はクビのこと/昇進システムの確立/売り場主任の望みは取締役/ブシコー未亡人の決断/サラリーマン人生の誕生/福利厚生制度確立の誓い/ガルガンチュアの厨房――無料の社員食堂/したたかな計算/快適な独身寮も無料/店員の意識改造/外観のブルジョワ化/男子はシルクハットをかぶること/店員むけ教養講座の開設/連帯感というメリット/従業員の差別化/ホワイト・カラーの成立/当時は異例の定期昇給/その他の労働条件
第五章 利益循環システムとしての福利厚生
社内貯金のすすめ/退職金制度の設立/フランス中を感動させた養老年金制度/利益循環サークルの完成/ブシコー夫妻と三千人の子供たちの店/慈善活動と社会還元/デパートの発明と現代社会――結論にかえて
パリのデパート小事典
あとがき
学術文庫版あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ごへいもち

28
元版の講談社現代新書を読んだので再読なのに殆ど忘れてしまっていて改めて面白く楽しんだ。著者と同様に現代新書はもっと売れて当然だったと思うがロングセラーになったのなら喜ばしい。著者の大借金の元になった資料類も効果的2024/05/12

さとうしん

15
ブシコー夫妻によるデパート誕生記。当時の流行品店から発展したデパート、ボン・マルシェの革新性を、同店などに取材したゾラの小説なども参照しつつ描き出す。まずは薄利多売にバーゲン・セール、顧客を教育するという発想、返品の受付、無料の休憩室、カタログ商法等々の販売戦略を紹介し、ついで歩合給制、社員食堂、社員寮、営業時間外の教育やクラブ活動、退職金・養老年金制度など、社員教育と福利厚生制度について触れる。デパートの歴史のみならず、19世紀後半以降の大衆社会化の一側面をうまく描き出している。2023/11/11

miaou_u

12
困難な世界情勢で物価高で消費も冷え込み円安で海外にも行けず、、、という世の中であっても『百貨店』という場所はワクワク感がないと、、、と、しみじみ思います。。。こちらのご著書はフランスの歴史ともリンクさせながらその中での百貨店の成り立ちやライバル店との戦い、客層心理など、消費者側としてもデパート経営や販売に携わっておられる方々にも 知れば知るほど面白く楽しい必読の書📕ではないかと思います…♪ フランスにおける百貨店の成り立ちについては、鹿島茂先生の他のご著書にて、より詳しく触れられております。2023/12/11

ろべると

12
以前に読んだ「デパートを発明した夫婦」にフランスのデパートの解説を加えた新装版。パリの老舗デパート「ル・ボン・マルシェ」を1852年に創業したプシコー夫妻は、絢爛豪華なディスプレイと販売戦略により中産階級を巧みに煽って莫大な利益を上げるだけでなく、社員寮や社食の充実だけでなく退職金など店員の福利厚生面でも、現代に通じる業績を遺した。同店の綿密な取材によるゾラの「ボヌール・デ・ダム百貨店」を併せて読み、往時の面影を残す店内に足を踏み入れることで、万博でも賑わった19世紀末のパリの栄華が生き生きと甦る。2023/12/01

Wataru Hoshii

9
19世紀半ばのフランスで誕生した世界初のデパート「ボン・マルシェ」こそが、現代の消費社会を生み出したということを論じたロングセラー(1991年の新書の改題)。今でも十分に通用するボン・マルシェのマーケティング、経営術には驚くほかないが、やはり重要なのは「デパートこそが消費者を教育してきた」という指摘だろう。大衆に向けてアッパー・ミドルになりたいという欲望を煽る手法は、今も世界で受け継がれている。鹿島さんの語りの魔力にはまってしまって、あっという間に読み終えてしまう。巻末の「パリのデパート小事典」も便利。2024/03/30

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