内容説明
須弥山とは、高さ約56万キロメートル、天神らが暮らす想像上の高峰である。5世紀頃インドで書かれた仏教論書『倶舎論』はこの須弥山を中心とする壮大な宇宙を描き出し、仏教が宇宙をどう捉えたかを詳細に解説した。本書は、『倶舎論』を基礎に他説も参照し、仏教宇宙観を簡明に記す。人間より優るが欲望の虜である天神とはいかなる存在か。「蛆虫に骨をうがたれる」といった地獄の責苦、世界を構成する四大と極微、宇宙の消滅と生成のサイクルなど、幅広く解説。後代に現れる極楽浄土の思想をも取り上げて、人生を苦とし、輪廻と解脱の思想を根底とするこのユニークな体系の変遷をたどる。長年読み継がれてきた入門書。
目次
まえがき/1章 人間は宇宙をどう把えたか/1 須弥山説の世界/2 仏教に説かれたインド亜大陸/3 太陽と月/2章 仏教の〝地獄と天界〟/1 地獄の世界/2 天界の構成/3 禅定者の世界/3章 極大の世界と極微の世界/1 三千大千世界/2 物質の根源 四大と極微/4章 仏教宇宙観の底を流れるもの/1 時間と人生/2 宇宙の生成と消滅/3 業と輪廻/5章 西方浄土の思想/1 娑婆と極楽/2 西方浄土の思想の起原/6章 地獄はどう伝えられたか/1 エンマの変身/2 三途の川/3 賽の河原と地蔵菩薩/7章 仏教の宇宙観と現代/1 実践的宇宙観から神話へ/2 仏教の宇宙観が示すもの/補注と訂正/ちくま学芸文庫版へのあとがき/解説 「仏教の面白さ」を伝える名著(佐々木閑)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
62
インド仏教の宇宙観、広大。 悲想非非想処。 ギリシャ哲学の影響あるのでは、と著者。興味深い。2023/10/10
ひよピパパ
11
仏教の世界観を知る上で格好の書。以前、講談社現代新書から出されたものの新版。内容は同じだが、若干の修正が加えられている。特に面白かったのは輪廻の思想や西方浄土の考え方について、ギリシアとインドとを比較されていたところ。その共通点に興味がそそる。2024/09/19
わ!
4
仏教の世界…と言っても、悟りとか解脱とかいった概念ではなく、仏教が持っている世界観、時間軸、ものの理(ことわり)などを、まるで観光案内ガイドブックの様に紹介してくれる一冊。5世紀頃にインドで書かれた仏教書「倶舎論」をもとにした話です。この須弥山を中心とした仏教地図は何度か見たり聞いたことがありました…が、「どうだ仏教世界というのは、途方もなく大きいだろう」と言うような、大量情報の羅列としか感じていなかったのですが、今回ようやく少しだけ、その本当の意味を覗けた気がします。最後の章の畳み掛けは最高ですね。2024/01/24
舫
1
実は、講談社現代新書版で既読なのだが。2023/07/31