内容説明
どこかで別れた大切な人を想うとき、相手もまた、あなたを想っているかもしれない。
――宮島未奈(『成瀬は天下を取りにいく』)
磯貝美佐、39歳。妊活がうまくいかず、母親離れができない優柔不断な夫・要一郎との生活に見切りを付けるべく、家を出た。東京の下町・谷中の六畳一間で、アンティーク着物のネットショップ「蔦や」を一人で切り盛りしている。友人は、恋愛対象が男性の美しき骨董屋、関くんだけだ。
ある日美佐が実家の蔵を整理していると、箪笥に大切に仕舞われた、祖母・咲子のものにしては小さすぎる着物を見つける。そして、抽斗の二重底に隠されていた3冊のノートと、見たことのない美少女が写った古写真も……。
この少女はどこの誰で、咲子とはどのような関係だったのか? ノートを読み始めた美佐はやがて、着物と少女の謎を突き止めた。咲子の生涯を懸けた「思い」を知った美佐は、ある決断をする――。ベストセラー『妻の終活』の著者が贈る、永遠の「愛」の物語。
『花は散っても』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
80
★★★★☆23065【何年、生きても (坂井 希久子さん)】取り壊し予定の蔵の中にあった箪笥から出てきた着物、その箪笥の隠し抽斗に祖母が書いた三冊のノートと写真。この着物とノート,写真をきっかけに、現在と祖母の過去を行き来しながら壮大なストーリーは始まります。昭和初期、戦争当時のシーンでは国民の錯乱と悲惨さが胸をえぐられました。AIやロボット,遺伝子技術など、過去のSF映画の中だった事が現実化しつつある現在でも戦争は無くなりません。どんなに科学が進歩しても人は変われないのでしょうか?残念です。2023/10/17
真理そら
58
時代物でなじみの坂井先生だけれど、この現代の妊活不首尾に悩むアンティーク着物のネットショップをしている美佐の物語と戦前戦後を生きた祖母の物語も楽しく読んだ。ま、英雄兄さま最低!ってことですね。女学生のS(エス)の対象としての龍子の魅力がいま一つ伝わらないのが悔しい。2023/11/03
のんちゃん
38
妊活不首尾で別居中の美佐はアンティーク着物のネットショップを営んでいる。ある日、実家の蔵の整理に帰ると古い箪笥の中に見知らぬ美少女の写真と3冊のノートを見つける。そのノートには戦前生まれの祖母咲子の一生が幼少期から戦中戦後、咲子の最期の頃迄、自身により綴られていた。咲子と養姉龍子の深い絆。それを感覚的に理解する事が難しかった。彼女達のお互いの存在価値、現代に生きる美佐の着物への熱情。私にはそんなに好きになれる何かがあるか?と読後考えてしまった。好きな事、物、人の存在はいつの世も生きる原動力なのだろう。2023/10/26
エドワード
37
古い着物のネット販売を手掛ける美佐は、不妊治療に悩み夫と別居中。ある日、実家の蔵の箪笥から、三冊のノートと半分にちぎられた写真が出てくる。写真には見知らぬ美少女。ノートには、美佐の祖母・咲子の、戦前からの人生が克明に記されていた。物語は現代と昭和前期を往来する。よく思うのだが、作家の方は、戦前戦後をどうしてこんなにビビッドに描けるのか、感心する。祖父母たちの、想像を超えた青春の喜びや葛藤。写真は咲子の姉の龍子だった。美佐は不仲にみえた姉妹の真実を知る。写真のもう半分が出てくる終章は、涙腺崩壊必至だよ。2023/10/24
takaC
31
新刊で買ったにしては既読感アリアリだなと思っていたら案の定別タイトルの改題だった。なぜ改める必要があったのかはわからない。装丁も単行本の方が内容に合っているような気がする。2024/08/27