- ホーム
- > 電子書籍
- > 絵本・児童書・YA・学習
内容説明
おかあさんを、ずっとまっているんだ。内田麟太郎が描く、母への切なる想いが、美しく広がる……。まだ ことばを すこししか しらなかったころ。/ばくは ラジオから ながれてくる ことばに、ふと みみを かたむけた。/うみのはは。/(そうか。かあさんは うみに……)/ぼくは 水平線 みつめた。/かあさんが、なみの うえを すべってくるようで。しろいきものの 女神さまのような すがたで。/まちつづけた。ずっと。水平線を みつづけながら。/ときどき、そっと よびかけて。/かあさん。/ゆうひが しずんでいく。それでも……。ぼくは まちつづけた。/ひがしずみ なみの おとだけになった。/ぴちゃ ぴちゃ。ぴちゃ ぴちゃ。/(かあさんは……、こなかった)ぼくは よみちを かえっていった。/それから なん年してからだろう。ぼくは すこし じぶんを わらった。海の母じゃなくて、生みの母だったのだ。/……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aiaimo`olelo
30
内田麟太郎さんの生い立ちを知っているので、涙が出そうになりました。 「産みの母」を「海の母」と勘違いした少年は、母親を探し求めて海辺で佇み続けます。母親を探し求めることほど辛いことはないのかもしれません。内田さんの悲しみの深さは海の深さ。反面、どこまでも広がる海は母性のよう。広く、深く、優しい。そんな母親を海の中に求め続ける内田さんの想いが伝わってきます。 求め続けたけれど手に入れることはできなかった母親への想い。内田さんはどのように乗り越えていったのでしょうか。私も内田さんを通して探していきたいです。2022/04/22
かおりんご
24
絵本。生みの母を「海の母」と勘違いして、お母さんに会いに海に行く男の子。切ないお話です。大人向け。2014/08/14
おはなし会 芽ぶっく
14
『絵本処方箋』 https://bookmeter.com/books/585825 で紹介されていた本。 生みの親を、海の親と勘違いして、海にお母さんを探しに行く男の子。とても切なくなりました。大人になって、我が子が出来た時、「きみは かあさんから 生まれたんだよ。」という言葉が、小さかった頃の自分に伝えたかったんですね。2021/02/06
ヒラP@ehon.gohon
10
自分が母親から生まれたことを知らない人はいないだろう。 でも、母親探しをする子どもがいたとすれば、その寂しさ、哀しさはどれだけのことだろうか。 うみの親という言葉に、海に母親像を求める子どもは、母親の愛を知らないに違いない。 でも、大人になって、恋をして、結婚して、子どもが生まれたとき、愛する女性に母親を見つけたのである。 きっと生まれてきた子どもは、最初から「誰から生まれてきたのか」を当たり前のようにして、知っていくに違いない。 かつての子どもは、昔の自分に語りかける。 母親って偉大だな。2016/09/03
anne@灯れ松明の火
4
内田麟太郎さん講演会予習。絵本作家さんや児童文学者には、辛い過去を背負っている人が案外多いと聞いたことがある。切なさ、悲しみ、涙、そんなものから生まれる絵本もあるんだね。2012/01/28