内容説明
科学が隆盛を極める現代においても、
宗教は衰えるどころかますます影響力を強めている。
ときに国家間の戦争を引き起こすほど
人々の心に深く根差した信仰心は、なぜ生まれたのか?
そして、いかにして私たちが今日知る世界宗教へと進化したのか?
「ダンバー数」で世界的に知られ、
人類学のノーベル賞「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した著者が、
人類学、心理学、神経科学など多彩な視点から
「宗教とは何か」という根源的な問いに迫った、
かつてないスケールの大著。待望の邦訳刊行。
■ ■ ■
集団内に協力行動を生みだす信仰心も、
集団の外に対しては反社会的行動の原動力となる。
宗教的アイデンティティが国家に利用されるとき、悲劇は起こる。
――フィナンシャル・タイムズ紙
宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。
本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、
真に大きな考察を展開しようと試みる大作である。
――長谷川眞理子(進化生物学者、総合研究大学院大学名誉教授/「解説」より)
■ ■ ■
目次
日本の読者へ
はじめに
第1章 宗教をどう研究するか
第2章 神秘志向
第3章 信じる者はなぜ救われるのか?
第4章 共同体と信者集団
第5章 社会的な脳と宗教的な心
第6章 儀式と同調
第7章 先史時代の宗教
第8章 新石器時代に起きた危機
第9章 カルト、セクト、カリスマ
第10章 対立と分裂
謝辞
解説 ヒトの進化と宗教の起源――長谷川眞理子
註/参考文献/索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
28
宗教というミームは、なぜかくも普遍的なのか?そして、なぜかくも変化・分裂してゆくのか。社会脳仮説とダンバー数150(安定的社会関係の認知的な上限)を使って、社会集団の拡大・階層化に伴う宗教の進化(アニミズム→シャーマニズム→教義宗教)を説明してゆくのは、いつものダンバー先生の方法。トランスや神秘体験のような個人的体験が言語により共有され、やがて同期する儀式を行うようになると集団結束(他集団に対する)が生じる。社会が複雑になった結果、安定を得るために高みから道徳を解く神の信仰を「進化」させた、と。2024/09/04
原玉幸子
27
著作名は忘れてしまったのですが「ダンバー数」との定義が衝撃的だった強い印象で、進化心理学者の著者を覚えていました。そして、敢えて『日本社会の歴史』を読んだ上での本書の選択に、自分を褒めてあげたい気がしました。本書は学術的なのですが、初めての用語「メンタライジング」が、小説での、げげっという驚きの展開そのもので、「ダンバー数」を基に宗教の起源を社会(生物)学的に解説されると、凄いっと感激します。学術書を不謹慎に? いえ、小説っぽい驚きの展開がある本書の様な学術書こそが本物なのでしょう。(◎2024年・秋)2024/08/17
特盛
27
評3.8/5。サル研究から進化心理学に展開したオックスフォード教授、ダンバー氏による宗教の起源に関する考察。トランス状態による心理変容=霊的な存在の確信と、人の心を想像する機能、この二つが宗教を生んだと著者は言う。宗教は共同体の団結・生存力を高め、またダンバー数で有名な、組織規模150人のガラスの天井を破る。シャーマニズムから、高みの霊的世界から臨む神、教義宗教まで共同体に果たす価値。主張は突き詰めれば、全部仮説だ。その意味で好き嫌いの物語だろうが、そういう側面はあっただろうなと説得力を感じる。2024/05/05
vy na
21
人類の進化上、宗教は必要なものだった。自分や他者の意識以外に「何か」があると想像する能力があったから。人と繋がることで、帰属意識を得て共同体の一員という感覚を持ち、同じ「何か」を共有できる者同士が同じルールの下でどのように振る舞うかわかっている安心感。その「何か」を想像して原因とし、相手の気持ちや解釈を共有する。それが進化の上で人が得てきたものなのだろう。何かは「宗教」となり、意味がなされて人をまとめる力となる。2024/02/23
hitomi
14
白揚社さんのX(旧Twitter)で知って。読み応えがあってとても面白かったです。「ダンバー数」で有名な著者が、宗教が生まれた理由と、宗教が広まり分裂しながらも現代まで続いている理由に迫ります。人類学や心理学、神経科学など多くの視点からアプローチしており、説得力のある内容でした。ヒトがつくる自然な共同体のサイズの説明や、カルト・カリスマについての説明、宗教の分裂についての説明が特に興味深くて面白かったです。註も含めて訳文が全体的に読みやすく、また長谷川眞理子さんの解説が分かりやすくて良かったです。2023/12/18
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