内容説明
ただ、江戸を守りたい。非力であろうと、臆病であろうと――。
二百六十年以上にわたる長き泰平の世で、江戸が初めて戦場になった日。
彰義隊は強大なる新政府軍に挑み、儚く散った。
名もなき彼らの葛藤と非業の運命を描く、号泣必至の傑作!
慶応四年。鳥羽伏見の戦いで幕府軍を破った新政府軍が江戸に迫る。多くの町人も交えて結成された彰義隊は上野寛永寺に立て篭もるが、わずか半日で最新兵器を駆使する官軍に敗北――。なぜ、名もなき彼らは、無謀な戦いの場に身を投じたのか。臆病者の旗本次男・小山勝美ら、若き彰義隊隊士の葛藤と非業の運命を情感豊かな筆致で描き出す、号泣必至の傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
171
梶 よう子は、新作中心に読んでいる作家です。彰義隊が主人公の物語は、初めてとなります。 滅びの美学、著者ならでは渋さが際立つ哀しい秀作でした。 https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344041899/2023/12/18
パトラッシュ
140
幕末の江戸に生きた若い武士を「戦争を知らない子供たち」として描き出す。「青空が好きで花びらが好き」な彼は平和な世で絵を描きたかったが、半強制的に彰義隊へ参加させられる。討幕の戦意盛んな薩長とは逆に時代の激流に巻き込まれた若者は、やがて江戸の町と民衆を守りたい一心で「大人になって歩きはじめる」のだ。銃を手に殺し合い、仲間や友が戦死するのを目の当たりにし、敗北の苦さを噛みしめながら「僕らの名前を覚えてほしい」と改めて筆をとる覚悟を固める。ウクライナの青空の下で侵略者と戦っている兵たちも同じ思いではなかろうか。2023/11/14
trazom
94
彰義隊をテーマとする小説。渋沢成一郎と天野八郎との路線対立などの史実を背景にしながら、隊に参加する名もなき人たちの思いを紡いでいる。結果的に烏合の衆と化す彰義隊だが、様々な人が様々な思いを持って参加する。徳川や江戸を守る大義に殉ずる人、俸禄目当ての人、食い詰めた脱藩者、血気に逸る町人、隣近所の手前で参加した人も。歴史的には、彰義隊は「時代の仇花」だが、一人一人にとっては自分を賭けた戦いだった。臆病者の隊士を主人公にして、時代や世間に抗いつつ流されてゆく苦しさが露わになる。時代の負け組の葛藤が胸に刺さる。2024/02/16
のぶ
84
上野戦争で徳川方に立って明治新政府軍と戦い、敗れて散った彰義隊の物語。自分はこのあたりの史実に疎かったので興味深く読ませてもらった。主人公は、川越松平藩の祐筆、その次男である小山勝美。兄、要太郎に強引に連れ出され、訳の分からぬまま彰義隊に参加させられる。そんな勝美だからこそ、彰義隊に加わる意味を問い続ける。読み進むうち彰義隊がいかなる組織だったかが徐々に浮かび上がって来る。勝美の疑問には同感することが多く感じられた。幕末から明治維新への混乱の時代がこの騒動を通して描かれていた。読み応えありました。2023/12/18
ポチ
48
非力、臆病というのは十分に分かったが、江戸を守りたいというのはいまいち分からず…。読解力がなくてすみません。2023/11/13