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内容説明
米誌への寄稿「天皇が人間の声で話した日」,韓国での講演「希望と恐れとともに」,ドイツの作家G.グラスとの往復書簡,フランス核実験に反対する手紙,国連大学での講演など,外国人に向かって,ノーベル賞受賞後の1年間に発表された思索の結果をまとめる1冊.それはまさしく,日本のありかたを自問するいとなみの集積である.
目次
フランス核実験をめぐる手紙と感想
天皇が人間の声で話した日
日本人はアジアで復権しうるのか
希望と恐れとともに
日本人は年とともに改良されたか
ギュンター・グラスとの往復書簡
信仰する人たちもそうでない私らも
平和への文化のために
時代から主題をあたえられた
後 記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
16
「あいまいな日本の私」と対となる講演や書簡。クロードシモンに当てた手紙はフランスが核実験したことの抗議へのセミナー?参加中止。作家であるべき政治的な態度表明はその後のギュンター・グラスの往復書簡でも被爆国として非戦の考えを述べる。それはアジア諸国への反省、特に韓国・朝鮮にはノーベル賞以後最初の訪問で日本の戦争に対しての過ちを認める。また講演ではユーモアのセンスも感じた。日本の政治家の想像力のなさ。2023/04/05
やまねっと
7
大江健三郎の講演や往復書簡、短い散文などが載っている本。 大江氏は世界を取り巻くことから文学で世界に訴えかけようとしているのだと感じ取った。 大江氏は今の北朝鮮や中国を取り巻く環境、アフガンのことをどう感じているのだろう?聞いてみたい気もするが…。フランスの核実験に思うことやオウム真理教の事件に対する文学者としての敗北感は読んでいてとても考えさせられる内容となっている。 大江氏が話す史観や私感についてはとても励まされた。 ヒロシマノートを読んでみたいと強く思った。2021/10/14
amanon
4
本書が出てから二十年近くを経た今日、著者の願いや意向とはほぼ正反対の方向に社会が進んでいることに唖然とせざるを得ない。愚直なまでに民主主義を信奉する著者のあり方には批判の声もあるだろうが、それでも僕自身はその姿勢を尊いものだと思うし、残り少ない人生もその姿勢を貫いて欲しいと願わずにはいられない。また、いくつかの文章が読売新聞に掲載されたものというのもちょっとした驚きだった。政府の提灯持ちと化したと言われる現在の読売新聞が果たして大江のこのような文章を掲載するだけの懐の深さを持ち得るだろうか…と。2015/01/07
寛生
4
99年に読んだ本
しお
3
本当に良い本だった。大江さんの講演を読んだのはこれが初めてだが、彼の偉大さが小説だけでなく歴史と向き合う姿勢にもあるのだと心底思った。「天皇が人間の言葉で話した日」の小説のような語り口はあまりにも美しく、ストレートな意見の訴えよりよほど心の深部に届いた。文学(物語)の力はこういうところにあるのだと思い、大江さんの未来を真剣に見つめる眼差しに感銘を受けた。2022/05/10