岩波現代全書<br> 変格探偵小説入門 - 奇想の遺産

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岩波現代全書
変格探偵小説入門 - 奇想の遺産

  • 著者名:谷口基
  • 価格 ¥2,530(本体¥2,300)
  • 岩波書店(2023/10発売)
  • ポイント 23pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000291132

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内容説明

江戸川乱歩,横溝正史,小酒井不木,夢野久作,橘外男,渡辺温,久生十蘭,西尾正…….彼らはみな,「謎解き」を主とした本格探偵小説とは異なる要素を重要視した「変格探偵小説」の書き手である.「本格」の枠を超えた豊饒さで読者を魅了し,今日まで途絶えることなく受け継がれてきた「変格」の精神史を,豊富な資料から論じる.

目次

はじめに
第一章 「変格探偵小説」とは何か
1 探偵小説の黄金時代
2 本格探偵小説と変格探偵小説
3 変格のふるさと
4 谷崎文学と新しい「怪談」
5 「機械」がつくりだす怪異
6 「化け物」としての映画
7 近代資本主義との対決
8 「柳湯の事件」――「神経」と探偵小説
9 「神経」と「神経衰弱」
10 「変態」という,新しい怪異
第二章 変格探偵作家としての江戸川乱歩
1 変態と変格
2 「押し絵と旅する男」
3 「古風」な世界への志向
4 魔性の双眼鏡
5 異界からの微笑
第三章 変格の血脈――横溝正史が受け継いだもの
1 横溝正史の変格志向
2 文豪は「探偵」嫌い?
3 明治の探偵
4 刑事巡査・私立探偵・しろうと探偵
5 「趣味の遺伝」――〈しろうと探偵〉と変格探偵
6 変格の遺伝子は浪漫の季節に開花する
7 「趣味の遺伝」と「孔雀屏風」
8 戦場を駈け抜ける「感応」
第四章 医文学者の変格――小酒井不木の「健全」と「不健全」
1 探偵小説の「リアル」と医学
2 小酒井不木――「不健全派」か「健全」か
3 「健全」なる変格とは――平林初之輔の評言を軸に
4 有理の怪奇・伝染する祟り
第五章 変格派の雄・夢野久作――未知の精神領域へ
1 「あやかし」の法則
2 永遠の循環を探偵する
3 「奇蹟」の顕現を探偵する
4 精神の要塞=「キチガイ」を探偵する
5 観念の無限循環を絶つ
第六章 変格のリアリズム――「実話」をめぐる試行
1 犯罪実話の歴史
2 「探偵小説座談会」と探偵小説の事実性
3 菊池寛と実話
4 長谷川海太郎の死と橘外男の登場
5 「実話」の裏舞台
6 「実話書き」橘外男のテクニック
7 変格的表象としての「実話」
第七章 変格のローカリズム――都市,秘境,そして鎌倉
1 都市と探偵――渡辺温「父を失ふ話」を例に
2 都市から秘境へ――橘外男の南米・アフリカ,久生十蘭の「地底獣国」
3 変格探偵作家・西尾正について
4 西尾正と鎌倉
5 「Kの昇天」の「影」
6 〈現実化する幻想〉から「フィクション」の勝利へ
7 鎌倉文士の「ドッペルゲンゲル」
結語にかえて――あらためて,変革とは,探偵小説とは?

参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

44
変格探偵小説を論じた一冊。中心は作品論であり各作家一、二編をそれぞれ取り上げて論じている。その点、入門いう題名には少々難あり。ただ谷崎や芥川といった探偵小説前史から乱歩、正史を経て戦後まもなくまでを俯瞰した内容は、通史として楽しむ事ができた。それにしても横溝正史、もっと取り上げるべき作品があるだろうに。個人的に好きな夢野久作、橘外男の関係等はそれぞれ詳細に論じられていて、この辺りは満足。やはりこういう本を読むと、論じられている本を読みたくなる。「変格」の魅力を語るのは十分成功しているなあ。2013/10/02

hanchyan@その解釈でいきましょう(笑)

37
べらぼうに面白かった。張った付箋が35枚(笑)。“それまで天にあってスノッブのみが賞用可能なメインカルチャーの一つだった文学が、歴史的過渡期に際してサブカルチャーとして地に降臨した態様、それそのものが所謂『探偵小説』であり、『本格探偵小説』は、その一ジャンルに過ぎない”という視座!ふだんコソコソと顔色伺いつつ(笑)「ヘンなの好き」を標榜してる自分にとってコペルニクス的転回だったぞ!生粋の『本格ミステリ』こそ少数派の専門種であって、その他有象無象なんでもアリこそが多数派だったのだ!!多種多様自由自在な(↓)2016/10/01

Ecriture

7
唯心文化と唯物文化が交錯する過渡期の歴史を留める新文学として探偵小説は模索された。明治維新が投げかけた強すぎる光によって祓われた霊たちを泉鏡花や柳田國男が別の形で呼び寄せたことからさらに進んで、モダニズムがもたらす新たな「怪奇」と因果関係を解き明かすためには怨霊復讐譚ではなく非論理の論理に貫かれた探偵小説が必要であった。映画メディアと近代産業下の強欲の「化け物」と、法の網をすり抜ける「変態」を描いた谷崎潤一郎に変格のふるさとを見出し、従来の芸術と文芸の枠をはみ出した「変格」的な表現の「変革」を読み解く。2015/04/06

黒い森会長

3
戦前の探偵小説、変格探偵小説についての解説。第1章はその歴史。谷崎、佐藤、菊池寛、らの純文学作家たちの「探偵趣味」から、江戸川乱歩の「変格探偵小説」の誕生へ。第2章以後は作家論。乱歩、戦前の横溝、小酒井不木、夢野久作、橘外男、西尾正。とくに、橘外男が、戦前の作家で、牧逸馬のような実話作家であったことに驚く。秘境作家だと思っていた。読みどころは「夢野久作」。変格探偵作家として理想的小説「ドグラマグラ」を完成させたところか。作者の熱が入っている。2017/08/25

劇団SF喫茶 週末営業

2
探偵小説の本質は謎解きパズルではない。例えばホームズは近代啓蒙主義の申し子であり、科学と理性によって古い伝統や因習を相対化する。ここには近代啓蒙主義 VS 前近代の伝統という対立の構図がある。この二つの思想の衝突するところに軋轢が生まれ、これこそが探偵小説の本質であると思う。さて、本書で扱う明治以降の日本では、突如輸入された西洋化によりそれまであった日本の非合理的なものを排除する動きが起きる。それに反発するように大量のグロテスクなもの、怪奇趣味、変態性欲、異常心理が溢れて探偵小説の形を取る。→2025/04/20

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