内容説明
90年前に南の島に漂着した山口百次郎,彼の誘いで移住した石山家.本書は山形出身の2家族を軸に日本人移民の苦難の歴史を壮大に紡ぎだす.後に日米両軍による凄惨なる戦場となるこの島で無告の民はいかなる悲劇に直面したか.海を越えた日本人は日本をいかに体現したか.瞠目の取材で忘れられた歴史を蘇らせた傑作.
目次
プロローグ
第1章 漂 着
第2章 獣の島
第3章 南洋成金
第4章 南洋の東京
第5章 北ガラパン二丁目大通り
第6章 南村第一農場
第7章 海の生命線
第8章 軍 島
第9章 戦 禍
第10章 収容所
エピローグ
証言者及び取材協力者
主な参考文献・資料
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
80
戦時中、祖父がサイパンにいたらしく以前から気になっていた。サイパンが日本の統治領になった経緯、集団移民の人々の苦労など知らない事ばかり。冒頭とエピローグで触れられた収容所内での日本人同士の殺人事件は、祖父もこの渦中にいたのかもと思うと衝撃的。米軍の侵攻の中、家族バラバラになりながら島の北端まで逃避行を続けた石山一家の様子はただただ辛い。戦時には平時の常識は通用しなくなり地獄のような日常になってしまう。生還できた人が忘れたい口にしたくないと思うのは当然だと思う一方、生涯忘れられるものではなかったろうと思う。2022/08/21
松本直哉
28
入植した日本人と現地人が仲良く並ぶ表紙の写真とは裏腹に「土人」としてきびしく差別された現実があり、賃金は内地人・沖縄人・朝鮮人・現地人の順で、戦局が厳しくなると真っ先に解雇され見捨てられたのは現地人だった。大正時代に漂着した一人の日本人から始まった入植は、サイパン銀座と呼ばれる日本そのものの賑わいをもたらすが、戦争がすべてを破壊し、亡くなった民間人の割合は沖縄戦を上回る。辛苦の末に島での生活に溶け込んだ人々がすべてを喪う経緯は無残だが、それ以上につらかったのは無関係なのに巻き込まれた現地の人たちだったろう2021/03/04
むーむーさん
23
「硫黄島 栗林中将の最期」に出てきて気になったので探して読んだ。読んで良かった。サイパンで民間人が多数犠牲になった話は聞いていても実感が伴わなかったのだがこれは凄い。移民した人に山形県人が多かった理由とか全然知らなかった。2016/05/09
Toska
14
「リゾート地・サイパンがかつて激戦地であったことは忘れられがち」という言説は珍しくない。本書はそこからさらに踏み込み、どうして激戦地になったのか、何故サイパンに日本人がいたのかに光を当てている。日本領サイパンの栄光と悲劇の物語。元居住者の証言がふんだんに用いられ、とりわけ在りし日のガラパン繁華街を再現した章などは見事の一言に尽きる。同時に、植民地経営が内包した様々な歪みも見逃されてはいない。大きく心を揺さぶる労作。2024/04/09
しもん
6
日本領だったサイパンの発展過程、人々の生活、心情、活況、対立、、戦争による変遷と悲劇・・・。漠然とした知識やバンザイクリフといった単語しか知らなかった自分にもリアルに当時の状況が伝わってきました。何気なく手にとった本でしたが、とてもとても深く厚い本だと思います。当時を生きた方々の証言というのは本当に貴重ですね。失われる前にしっかりと残し受け継がなければいけないと思います。この本のような良著がもっと世に出て大勢の方に読まれる事を願います。 2014/09/30
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