実践 日々のアナキズム - 世界に抗う土着の秩序の作り方

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実践 日々のアナキズム - 世界に抗う土着の秩序の作り方

  • ISBN:9784000220965

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内容説明

アナキズムとは特別な政治運動でも革命でもなく,日々の暮らしの中から社会を変えていく実践である――東南アジアでのフィールドワークを通じて,国家の束縛から離れた社会のあり方を希求してきた政治学・人類学の泰斗スコットが,西欧文明社会で暮らす自らの経験からたどり着いた実践的アナキズムのエッセンスを,軽妙洒脱に説き明かす.

目次

はじめに
アナキストの懐疑の眼,もしくはアナキストのように眺めること
組織の逆説
社会科学の実践に対するアナキストの懐疑の眼
一つ,もしくは二つのご注意
第一章 無秩序と「カリスマ」の利用
断章1 アナキスト柔軟体操というスコットの法則
断章2 不服従の重要性について
断章3 さらに不服従について
断章4 広告「リーダーがあなた方の導きに喜んで従うつもりで,支持者を求めています」
第二章 土着の秩序と公式の秩序
断章5 土着と公式,二つの「知る」方法
断章6 公的な知と管理の風景
断章7 土着的なるものの柔靱な反発
断章8 無秩序な都市の魅力
断章9 整然さの裏の無秩序・混沌
断章10 アナキスト不倶戴天の敵
第三章 人間の生産
断章11 遊びと開放性
断章12 なんて無知でばかげているんだ! 不確実性と適応性
断章13 GHP :総人間生産量
断章14 介護施設
断章15 制度のなかの人生という病理
断章16 穏やかな,直感に反した事例――赤信号の除去
第四章 プチ・ブルジョアジーへの万歳二唱
断章17 中傷されてきた階級を紹介する
断章18 軽蔑の病因論
断章19 プチ・ブルジョアジーの夢――財産という魅惑
断章20 プチ・ブルジョアジーのさほど小さくはない機能
断章21 「無料の昼食」,プチ・ブルジョアジーの親切
第五章 政治のために
断章22 討論と質――質の計量的測定に対する反論
断章23 もしそうなったら……? 監査社会の夢想
断章24 当てにならず,必然的に劣化する
断章25 民主主義,業績,政治の終焉
断章26 政治を弁護する
第六章 個別性と流動性
断章27 小口の善意と同情
断章28 個別性,流動性,そして偶発性を取り戻す
断章29 歴史の虚偽をめぐる政治学

訳者あとがき・解題(清水 展)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイトKATE

39
私はアナキズム(アナーキズム)を誤解していた。アナキズムは無政府主義と訳され、左翼の過激思想と思い込んでいたが、アナキズムは権力から隷属されないことであり、本当の自由を得るための思想である。本書で中央集権的権力があらゆる分野に入り込むことが、社会の疲弊への原因だと著者ジェームズ・C.スコットは指摘している。アナキズムは一人ひとりが権力を飼い慣らし隷属しない手段である。グレーバーの著書でも書いたが、アナキズムは未来を生きるために必要である。 2022/05/18

松本直哉

39
国家を否定しても革命を起こしても、結局また別の抑圧と搾取の権力を生むだけだ。必要なのはそんな大がかりなことではなくて、日々の生活の中で、階層秩序や規範性にとらわれないやり方で、相互的で互恵的で無償の生を営むこと。信号を廃止したらドライバーがより注意深く運転するようになって事故が減った事例、またヴィシー政権下のユダヤ人迫害の国是に逆らって、逃亡するユダヤ人を匿うフランスの田舎町の事例などからわかるのは、与えられた規則や法律の遵守よりも、今ここにいる人への気遣いと心配りが人間の尊厳を保証するのだということ。2020/12/13

おたま

34
ここで述べられている「アナキズム」はいわゆる「無政府主義」ではない。むしろシステムや計画、量的な評価等に対して「否」というあらゆる行動を指す。人間のもっている自律性や自発性を、あらゆる場で開花させようとする、そうした視点のこと。この本の叙述スタイルそのものが、すでにそうしたことの実践となっている。29の断章からなる文章には、体系や構築といったものはなく、それらの断章は呼応し合い、増幅し合っている。街路について、教育について、工場について、具体的に「否」の視点で見てみようとしている。 2021/08/13

月をみるもの

28
現代においてアナキストたらんと欲するのであれば、グレーバーとスコットを読まずにはいられない: 「かつて私の頭脳明噺な同僚が、一般に西洋における自由民主主義は、もっぱら富と収入の観点から上位20%を占める人びとの利益のために運営されていると分析した。彼によれば、この仕組みを円滑に維持する秘訣は、とりわけ選挙の時期に、収入分布における次の30%の人びとに、この最も豊かな20%を羨むよりも、最も貧しい50%の人びとを恐れるように仕向けることにある」2022/02/25

Yuma Usui

26
無政府主義ほど過激でないが権力に従順でない生きかたの有用性を説いた一冊。匿名の市井の民が如何に歴史に影響を与え、また現代を生きる私たちが如何に影響を与えることができるかについて語られている。吉田松陰の説く草莽崛起のマイルドなバージョンといった印象。国民が自分の望みを叶える為に政府と競合的な振る舞いを行うことで、結果的に両者に有益な状態になるイメージ。機械学習でいう敵対的生成ネットワークが想起されて興味深いものだった。2020/04/25

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