内容説明
念願だった映画の宣伝会社に転職した弥生。そんななか、夫から切り出された「ある提案」を受け入れられず、忙しさにかまけて決意を先延ばしにしていた。だが、その日は確実に迫っていて……(「あなたのママじゃない」)。
優良メーカーに内定が決まった大学生の健生。サークルで知り合った恋人未満の彼女から同棲を仄めかされるが、うやむやにしていた。そんなある日、アパートに帰宅すると、かつて池袋で暮らしていた美空が現れ――(「BE MY BABY」)。
初対面なのに物怖じせず、屈託のない転校生の美月を前に、副担任の杏子の心は騒めいた。懸念されることの一つは、クラスの中心的人物で問題児である莉愛の虐めの標的になることだったが……(「まだあの場所にいる」)。ほか全5話。
閉塞的な現実を背負う人たちの、さまざまな葛藤の中で現れた「気づき」とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
185
『今夜、ぬか漬けスナックで』の古矢永塔子さん。ほぅ・・私の想像の斜め上を軽々と・・な感じ。短編5話。最後にちゃんと?思わぬ着地点に導いてくれる心地良さったら。小気味いいと言おうか。そして、このタイトルだ!私に言ってる?貴女に?誰に?好みは「女が夢を追いかけることに怯む男なんて、やめなさい」と息子の事をいう元姑が好い『あなたのママじゃない』母親だったかぁの『BE MY BABY』爽快だった宇宙人・倉橋美月に天晴れの『まだあの場所にいる』誰かと語りたい気分だ(笑)2024/02/20
まこみや
130
トリッキーな作家だ。そのトリックは作品内部のトリックというより作品外の読者との間に仕掛けられたトリックだと言える。物語内の登場人物間の罠や騙し合いではなく、ストーリーの展開上あるいは表現上、人物関係や人物の真意を意図的に作者が隠すことで、読者をミスリードする仕掛けである。騙されるのは他ならぬ読者であって、作者と読者の駆け引きのなか、読み手は予想外の地点に物語が着地することを楽しめばよい。ただこのパターンを繰り返されると、三つ四つと読むうちに、作家のツイストがある程度予測されてくるのだけれど。2024/01/22
モルク
129
「今夜、ぬか漬けスナックで」の古矢永さんの5話の短編集。どんでん返しという訳ではないが、最後におっ!と感じさせるその仕掛けが鮮やか。一癖あってちょっと可愛いげのない主人公たち、でも憎めないというか共感するものがある。完璧な義母、それに対し自分は仕事に忙しく家事は夫に頼りきり、頼まれたことさえ果たせない。そんなとき偶然義母の別面を見てしまう。夫との関係の変化に義母とも…という「あなたのママじゃない」とルッキズムを扱った「まだあの場所にいる」が好き。2024/08/27
おしゃべりメガネ
113
『今夜、ぬか漬けスナックで』の作者さんの新刊です。『ぬか漬け~』がなかなかインパクトある作品だったので、本作に期待しましたが、ちょっと合わなかったかなと。どんでん返しとまではいかないまでも、ちょっとした仕掛けがそれぞれに施された5編からなる短編集で、読めるには読めていけますが、なんだか読後感が私にはイマイチ。モヤモヤというか、スッキリとはいかない一冊でした。好きな人は好きなんだと思いますが、作者さんには『ぬか漬け~』のようなちょっとシリアスながらも結果的にはスッキリするドラマを書いてほしいかなと思います。2024/03/07
やも
96
職場近くのコンビニにいたお義母さん、彼女っぽい女と付き合ってる時に家にあがりこんできた女、連名で漫画を書いてたアイツ、隣の家のやべーあの子を見て思い出すいじめっ子の記憶、転校生の女のコに違和感、の5話。これがどれも面白かった😳‼️叙述トリックというか、思い込みってすげーなぁ…を実感。オセロの角っこ取って、一気にひっくり返されたような。読んでる最中はぞわぞわ、読後感ほっこり。私、この作者さんとホースフィット🐴✨2024/01/31