内容説明
1970年代、環境保護思想の高まりとともに始まった英米系環境美学
代表的な環境美学者であるカールソンを始めとする諸学説を批評理論として読み直し、常に我々を取り巻き変化し続ける環境に対する美学的アプローチを考察する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
die_Stimme
5
『「ふつうの暮らし」を美学する』読書会のために読んだ。博士論文をもとにした本のため専門的ではあるが、著者のスタンスは一貫していて難解な用語もきちんと説明されており振り落とされず読みきれた。常識的/科学的知識が対象理解を促進するという環境美学の第一人者アレン・カールソンの理論を叩き台として、「環境批評」という観点から環境美学の主要な理論が整理される。人がなにかを鑑賞するにはフレーミングが必要であり、環境の批評を行うにはそのフレームがなんらかの意味で共有される必要がある。2024/11/09
takahiroyama3
2
良書。英米系の環境美学レビューを通じて議論を展開する一冊。既存理論より、環境批評では「見た目」より「知識」を重視し、特に科学的知識(中でも、生態学・歴史)を重んじる立場を紹介する。その後、観光と居住という統括的行動をケーススタディとして、観光における知識とズレ、居住における時間経過と親しみが、美的鑑賞をもたらすカギであることを紹介する。最後には、よりよい環境批評家の重要性を、人間ひとりがすべての環境を経験することは出来ないということを前提として展開している。この分野は初学だが、読みやすい一冊です。2021/01/14
みかん
0
研究室時代の先輩の著作。個人的には観光についての箇所が興味深く、旅行自体のみならず計画を練る行為も撮った写真を吟味する行為も美的経験になる、という知見に救われた気持ちになったし、だからこそ他者と旅を共にすることで視点の相違を重ねるのは面白いのかもしれない、と思った。2020/12/31
おちこち
0
環境美学という新しい分野に対して、先行者の議論を参照しながらタイトルにあるとおり「環境を批評する」ということにたいして、独自のモデルを展開する。環境における鑑賞対象の選択及び鑑賞にもとづく美的判断の規範性というそれぞれの問いに分けていることで議論の見通しが良くなっている。2022/08/07
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