ちくま新書<br> 道徳的に考えるとはどういうことか

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ちくま新書
道徳的に考えるとはどういうことか

  • 著者名:大谷弘【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2023/10発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075864

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内容説明

その考えは正しいか正しくないか、あるいはそれをすべきか否か――。私たちは日々、様々な道徳的判断を迫られ、あるときは自然に、また別のときには悩みに悩んで結論を下す。こうした判断はしばしば、自分たちの外部にある絶対的な規準を個別の現実に当てはめるものとして思い描かれる。だが、そんなふうにすべてを一刀両断できる規準などありうるだろうか。「非主流派倫理学」の立場からプラトン、ウィトゲンシュタイン、一ノ瀬正樹、槇原敬之らの実践を取り上げることで、道徳的思考の多様で奥深い内実を浮き彫りにする哲学的探究。

目次

はじめに/道徳的観点/道徳的思考と価値観/道徳と規則/ごちゃごちゃした活動としての道徳的思考/第1章 当たり前を問い直す──なぜ法律に従うべきなのか/高速道路料金不払い運動/和合の主張への批判/キング牧師の公民権運動/キング牧師の主張/なぜ法律に従うべきなのか/当たり前/「当たり前」が通用しないとき/道徳的思考と論証の吟味/道徳的想像力/第2章 想像力を働かす──プラトンの『クリトン』を読む/ソクラテスと不知の自覚/ソクラテス裁判/『クリトン』/単に生きるのではなく、よく生きる/正義の原理と国法の登場/尊敬論証/同意論証/コーラ・ダイアモンドと『クリトン』/一般主義解釈の問題点1──尊敬論証/一般主義解釈の問題点2──同意論証/同意論証の非一般主義解釈/尊敬論証の非一般主義解釈/知識と想像力/個人的かつ客観的な倫理/第3章 意味の秩序を現出させる──想像力と言語ゲーム/想像力とは何か/感情、理性、想像力/想像力と意味/言語的意味、言われていること、含み/イメージと意味/後期ウィトゲンシュタイン哲学/言語ゲームと生活/道徳的思考と言語ゲーム/意味内容の更新/一つの言語を想像するとは、一つの生活の形を想像することである/古代ギリシアから現代日本へ/第4章 動物たちの叫びに応答する──応用倫理学における想像力/動物倫理/パーソンとしての動物──一ノ瀬の議論のアウトライン/ロックに基づく論証/標準的な読みとその問題点1──「声を上げる能力」の多義性/標準的な読みとその問題点2──パーソンにこだわる理由/類似性が存在しないと思われるところに類似性を見て取ること/想像力を刺激する/現実に狼狽すること/関連する一ノ瀬の議論/動物たちの叫びに応答すること/但し書き/第5章 感情を信頼する──道徳的思考と感情/理性と想像力/理性と感情/レイチェルズ父子の見解/感情の正当性について/エリオットの症例/ソマティックマーカー仮説/発見と正当化/『ハックルベリー・フィンの冒険』/ハックの葛藤/感情の信頼性/純粋な感情/理由としての感情/道徳的思考のスタイル/第6章 多様なスタイルで思考する──槇原敬之の倫理学/文学と倫理学/非主流派の倫理学/功利主義/ダイアモンドの思考実験/功利主義と欲求の充足/ダイアモンドのディケンズ論/他者への非批評的な関わり方/仕返しと強がり/前向きの視点と後向きの視点の共存/導き手としての「僕」/パフォーマンスとしてのポピュラー音楽/範例/道徳的思考とポピュラー音楽/おわりに/個人の倫理と公共の倫理/『メノン』の数学認識論/新しい意味の秩序に気づかせること/道徳的思考のアルバム/読書案内/あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

47
学術的なスタイルは論理的に考えられるが、道徳において個別事例の重要性を正当に扱うことができない。本書では、道徳的に考えるには想像力や感情が必要になるという、極めて当然のことを論じているのであまり読まれていないのだろう。第2章で『クリトン』を丁寧に論じている様に、歩みはゆっくりで読むのに苦労しない。何が問題かというと、恐らく分析哲学によって道徳も解明されるのではないかという読者の期待にある。むしろ論理の限界を明確化し、文化がつくってきた豊饒な価値形態と相補的な関係を構築することの重要さに焦点を当てている。2023/11/28

oooともろー

6
道徳的思考は理性と感情と想像力が絡み合ったごちゃごちゃしたもの。なるほど!2023/11/17

おやぶたんぐ

4
“なぜ法律に従うべきなのか”という問いかけから始まる本書が説く道徳的思考の在り方ー理性、想像力、感情をフル活用する必要がある故に、型にとらわれない多様なスタイルでの思考があり得るーに異論はない。ただ、冒頭で触れている死刑存廃論が、そのような道徳的思考で決着がつく(つけられてよい)ものなのかは正直疑問。共感が尽きて憤りが現在する状況(本書が引用するディケンズの「我らが共通の友」の場面とは本質的に異なる)なのだから。2023/12/03

zunzun

3
道徳は一刀両断できるものではない。 複合的なものが混ざり合って構成される、ということを示した本。 鍵語は「想像力」である。プラトンの『クリトン』にはじまり、現代日本の哲学者・一ノ瀬正樹や伊勢田哲治の動物権利に関する議論にまでその範疇は及ぶ。人はなぜそれを選択するのだろうか?そこにあるのは理性的な判断だけではたりない。感情的な直観があることで選び取ることができる。そして、相手の論理への想像力を膨らませることで、なぜ相手が「かくのごとく」述べたことが根拠になるのか理解できるようになるといったことを書いている。2023/10/06

takao

2
ふむ2024/09/12

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