内容説明
人生もコーヒーも、苦いけれどうまい。
松尾純一郎、バツイチ、57歳。大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中だ。再就職のあてはないし、これといった趣味もない。ふらりと入った喫茶店で、コーヒーとタマゴサンドを味わい、せっかくだからもう一軒と歩きながら思いついた。趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、京都──「おいしいなあ」「この味、この味」コーヒーとその店の看板の味を楽しみながら各地を巡る純一郎だが、苦い過去を抱えていた。妻の反対を押し切り、退職金を使って始めた喫茶店を半年で潰していたのだ。仕事、老後、家族関係……。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる。
『三千円の使いかた』で大ブレイクの著者が描く、グルメ×老後×働き方!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
350
原田 ひ香は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。主人公は、私と同年代ですが、私からしてみても相当解っていない気がします。私は、絶対早期退職したり、喫茶店をOPENさせたり、熟年離婚したりしません(笑) https://dps.shogakukan.co.jp/kissaojisan 11月は、本書で読了です。2023/11/30
さてさて
303
『俺、そんなに悪い父親でも、夫でもないと思うんだけどなあ』。大手ゼネコンを早期退職したものの、その退職金のほとんどを注ぎ込んだ喫茶店事業に失敗した主人公の松尾純一郎。この作品では、そんな松尾が『お前は本当に、何もわかってないんだなあ』と周囲から言われ続ける中に困惑の日々を送る姿が描かれていました。原田さんらしい”食”の描写に魅せられるこの作品。『喫茶店』にこだわる”食”の描写にも魅せられるこの作品。ままならない人生の中で、それでも前に向かって生きていく他ない、そんな人の思いをそこに見た、そんな作品でした。2023/10/14
旅するランナー
242
早期退職した、57歳おじさんの切ない喫茶店巡り。「男の人生というのは、理想的な喫茶店を探す旅ではないか」「東京で成功している喫茶店には、どこか必ず哲学があるものだ」「人生の時間を潰す、というのも喫茶店の大切な役割だ」など渋いセリフが多い。主人公が喫茶店にはまるキッカケになった「アメ横ダンケ」やアンプレスが有名な「ショパン」など訪問済みのお店も多いけど、まだまだ行きたくなるお店もいっぱい出てきます。2023/11/08
tetsubun1000mg
204
大手ゼネコンの早期退職から喫茶店を始めるも閉店させて退職金を溶かして志う松尾さんが主人公。 妻や娘にも愛想をつかされてしまう定年近いおじさんに脱力してしまう程なのだが、喫茶店が大好きな思いは伝わってくる。 原田さんも名前は出ないが登場する実在の喫茶店を相当回られたのだろうな。 コーヒーやスパゲッティやサンドイッチ、甘味ものなどの味がリアルに伝わってくる。 二度目の結婚も結局破局するのだが、結果的ひっそりとした小さな喫茶店を始めようとする終わり方はほのかに再生を感じられて良かった。割と好みの小説でした。 2023/12/20
hirokun
204
星3 喫茶おじさん、たぶん題名からは読まない小説。読書メーターを活用していなければこの本との出会いもなかったことだろう。途中までは、なんて軽い内容の小説だろうと思っていたが、定年退職したて、無職の私にとっては妙に現在の自分と重なる部分が多く、わが身と比べながら読み始めていた。私は喫茶店に入ってもあまり落ち着くことがないため、普段あまり喫茶店に入ることがないが、退職してからは時間があるため、コーヒーを自分で入れて楽しむ時間は増えた。本を読みながらコーヒーを嗜む時間は、至福の時間で何にも代えがたい。2023/11/10