内容説明
二度読み必至!
伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、
光と闇が反転する傑作短編集。
1,「ばにらさま」 僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。
2,「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。
3,「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。
4,「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。
5,「20×20」 主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。
6,「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。
以上6編を収録。
日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み。
読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け。
「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成。
引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学!
2021年10月に惜しくも逝去した著者最後の小説集。
解説=三宅香帆
※この電子書籍は2021年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
422
★★★★☆ 山本文緒さんの遺作。6篇の短編が収められており、いずれもありふれた人の営みが少しの毒を含んで描かれる。若干の叙述トリックもあって結末が読めない作品が多い。過去が繰り返される系の話が複数あったのも興味深い。そして、人の死とその影響を描いた後半の2作品は、死期を悟っていたであろう著者の想いが感じられて色々と考えさせられる。 叙述トリックが光る『わたしは大丈夫』と『菓子苑』も良かったが、『子供おばさん』の主人公の達観したかのような生き方が1番心に刺さった。2024/02/13
mae.dat
273
表題作から始まる6話短篇集。どの話もちょっとテクい事をしている様な気がする。全部が同じパターンである訳も無いのですけど、概ねちょっと特異な境遇、性格、価値観を持った感じの女性を客観視する。そんなストーリーでね。彼女らはそれぞれ何かしらの問題を含んでいる様なんだ。でもそれが解決されないまま物語は幕を閉じるの。それで最初は「ん? で何⁇」ってなるけど、じわじわと余韻が長いねぇ。大体が悪い目の後味ね。不思議ちゃんを見守る側の語り手もね、いちもつ抱えると言うか、誤解を恐れずに言えば病んでいる感じなんだよねぇ。2024/04/24
ケンイチミズバ
84
呟きはバレてしまってる。SNSでの彼女は、ばにらさま。クリスマスイブの予約がちゃんこ鍋には私もどうかと思ったがそれは彼の素朴な優しさ、彼女がいつも寒そうにしていて、あまり食べないから。元気になって欲しかった。もっと上のランクの男といい関係になれなかった時のキープとしての彼を貶すツブヤキや腹黒さが悲しい。冒頭のこの作品がなかなか心に残る。私も弱い立場の女性を気の毒に思うことがある。正社員と派遣社員では東京での生活レベルの差はいかんともし難い。そして彼女たちはみな一様に同じに見えてしまう。金太郎あめ。古いな。2023/11/20
かぷち
78
6篇の短編集でどれも大人の女の話。自己中心的でわがままで、なんとかなるさって選択が浅はかで、嫌な面ばかり描いているが不思議と憎めない。見方を変えれば、不器用なだけなのが分かるから。剥き出しの自分を恐れ、取り繕う他にやり方を知らないのだ。子どもの頃は遠い存在だった大人も、いざ自分がなってみれば「こんなもんか」って感じる。幼さは永遠。飾ってない素の姿を作家さん自身がさらけ出していて、文字通り魂を削って作品を生み出しているのが痛い程伝わってくる。2023/11/26
ぼっちゃん
64
6つの短編集。祖母とポーランド人との恋を描いた『パヨリン心中』、亡くなった友人のエンディングノートの記載されていた犬を引き取ることになる『子供おばさん』が印象に残った。これが山本文緒さんの最後の作品集になるのですね、『プラナリア』『アカペラ』『恋愛中毒』『自転しながら公転する』など好きだったので残念でしかたありません。2023/11/13