内容説明
慶応2年12月25日に崩御した孝明天皇については、その直後から「毒殺説」がささやかれていた。疱瘡(天然痘)に罹患したものの、快方に向かいつつあった天皇の容態が急変し、死に至ったからである。
戦後になると、ねずまさし、石井孝、田中彰氏らの近代史研究者によって「毒殺説」が主張されたものの、平成元年に原口清氏の論文が発表されるに及んで「病死説」が俄然有力になった。
著者は原口清氏の論文を批判して「毒殺説」を支持してきたが、近年(2020年12月)になって橋本博雄氏(医学博士)が論文「孝明天皇と痘瘡」を発表し、そこでは孝明天皇の症状の記録を検証する限り、痘瘡による病死とは考えられないという結論が導き出されていた。
これに示唆を受けた著者は関連史料を再読し、孝明天皇の死因は急性砒素中毒であることを論じたうえで、さらにその背後で画策した黒幕と、置毒した実行犯の女官の名前を割り出した。
本書は幕末維新史の再考を迫る内容を提示した表題作を中心とする史論集である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
最も利益を得る者が殺人犯との鉄則に従えば、孝明天皇暗殺犯は岩倉具視しか考えられない。以前から唱えられていたが、本書で列挙される状況証拠は真っ黒だ。天皇がいる限り岩倉の勅勘は解けず、公武合体説を貫かれては維新も成就しなかった。また置毒の実行犯と名指しされた中山績子にも尊号一件以来の幕府への恨みに加え、やはり勅勘を受けていた中山家の当主忠能の復権という大きな利益があった。テロの横行する幕末京都では天皇といえども、政敵と見なされ抹殺対象になったのか。著者には岩倉による天皇暗殺計画が主題の犯罪小説を書いてほしい。2023/09/20
Ezo Takachin
7
やはり孝明天皇は毒殺された。首謀者は岩倉具視。今後のさらなる研究も待ちたいところです。孝明天皇の信頼を受けていた会津藩主・松平容保はさぞ辛かったことかと。題名以外の幕末ネタについても著者の短編集的な本になっています。2023/12/04
まー
5
表題 "孝明天皇毒殺説の真相に迫る" は第1章がメインで特に興味深く読ませてもらいました しかし実行犯まで特定するとは素晴らしいですね他の章は幕末の有名無名の人物や出来事に関しての記述でしたが知らないことも多々あり幕末ファンにはオススメの作品です2023/10/29
好奇心
3
これまで何度も話題として取り上げられた、孝明天皇の死、幕末の一番、悩ましい国難、開国か? 攘夷か? 公武合体か? 天皇は強烈な攘夷派だった、こんな背景を抱えていたので、余計に死ににつて疑義が生じたのか? 若し天皇が毒殺されたのだとしたら、大事件で国を揺るがす、犯人が見つからないはずが何のではないか? 孝明帝が生きていたならば、維新はあったのか、遅れたのか? またこれも興味深い この問題は今後も永遠に論議されることであろう、天皇の死が毒殺か?病死なのか?2023/10/01
鈴木貴博
2
著者は「幕末維新史の定説を斬る」https://bookmeter.com/books/3166263 でも孝明天皇の死因について論じているが、その後医学的見地からの新たな論文が出たのに示唆を受け、史料を再読したとのことで、本書では黒幕だけでなく遂に実行犯まで特定する。説得力が高いと感じたが、今後のこの論争の動向を注目したい。表題作のほかにも幕末維新史に関する目から鱗の様々な文章を収録している。読んだ後には世界に対する見方が変わる好著。2023/09/03
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