内容説明
合理的な選択か、大きな間違いか
同調は、人類と同じくらい長い歴史をもつ。エデンの園では、アダムがイヴに追従した。世界のさまざまな大宗教が広まったのは、同調の産物だといえる部分もある。
同調によって暴虐な行為が実現してしまうこともある。ホロコーストは同調がきわめて巨大な力をもつことの証だったと言える。
共産主義の台頭もまた、この力を表わしたものだった。現代のテロリズムは、貧困の産物でもなければ精神疾患や無教育の産物でもない。その大部分は、人が人に与える圧力の産物なのである。
同調に単純な評価を下したところで、まったく意味をなさない。一方では、文明の存立は同調によって支えられている。その反面、同調はおぞましい行為を生み出したり独創的な力を潰したりもする。
本書が強調するのは、同調の力学についてである。
とりわけ息苦しい日本社会では、同調の解明が急務だ。SNSはじめ便利になればなるほど、「空気」の支配は苛烈をきわめている。
ハーバード大学の講義から生まれた、記念碑的著作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえぽん
36
Nudgeで有名なHLS教授による特定の社会を超えた同調傾向と向き合う制度論。同調やカスケード自体は問題ではないとしつつ、人々が有益な情報を公にしないこととなる結果、大間違いをもたらしうるとする。コロナや大震災で多くの人が経験した利用可能性ヒューリスティックとカスケードとの組合せは、メディアの報道姿勢によっても増幅されてきたと感じる。合衆国憲法が保障する連邦制、二院制、米国に特徴的な合議制執行機関は同調傾向への遮断力を持つとするが、日本の二院制や地方自治の機能はどうか。法学教育での多様性重視は首肯できる。2024/01/28
りょうみや
25
人はいとも簡単に無意識に集団の影響を受けることを社会心理学的に示して、集団として極端な意見に陥らないための、法や制度のあり方について理路整然と述べられている。それは少数派の意見、批判的思考を常に抱えておくということになるだろうか。合衆国憲法はそのことを大事にしていることを強調している。最近のネット・SNSにも触れていて同じように当てはまる。巻末で訳者が有名な「『空気』の研究」と比較しているところも面白い。本書はその「空気」を社会心理学的な現象として見事に説明している。2024/03/17
Mc6ρ助
18
『訳語について少し注記すると、conformityはーーマイナスのイメージが糊塗されがちだがーー「同調」と訳した(タイトルは出版社の意向で「同調圧力」 とした)。 (p182: 訳者あとがき)』って、サスティーンさんの意図とタイトルの(アベノマスク的な)日本語のイメージの乖離が大きすぎませんか?まあ、熟議を経ない同調を憂う著者の危惧は正しいと思うけれど、圧殺される重苦しさがお馴染みの自公維新に投票しない日本国民たちの焦燥とはちょっとかけ離れているかな?2024/08/01
とりもり
4
タイトルは「自粛警察」のような強圧的なものを想像させるが、内容はもっと多岐に亘る。人は多数派の意見の影響を受けやすく(同調)、特に集団の議論はその傾向に沿ってより極端な考え方に収斂する傾向にある(集団極性化)。また、少数の主唱者の意見に他の人間が感化されがちでもある(カスケード)。対策として、連邦最高裁判決を例に必ず少数派の裁判官を加えることで結論の多様性を確保することを挙げる。ネット社会で同質の意見を持つコミュニティ化が促進される中、同調・カスケード化をどう防ぐかは民主主義の重要な課題かと。★★★★☆2023/12/02
ソフトバンク
2
アメブロに書きました https://ameblo.jp/softank/entry-12861016611.html2024/07/18