内容説明
「絶対に無理はしないでください」豪雨に見舞われた地区にボランティアとして赴いた〈私〉は、畑に流れこんだ泥を取り除く作業につく。その向こうでは、日よけ帽子をかぶった女性が花の世話をしていた。そこはまるで緑の小島のようで――。被災地支援で目にした光景を描いた表題作のほか、広島カープを題材にした3作など14編を収録。欧米各国で翻訳され、世界が注目する作家の最新作品集!(解説・藤野可織)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かぷち
72
カープの話と聞いてファンなら必読!と書店へGo。短編集で「異郷」「継承」「点点」が広島が舞台。栗原でおーっとなり、チェコで懐かしい〜。贔屓チームが負けると空気悪くなる感じ分かる、ほんとにギスギスするんだ。カープ以外の話は全体的に改行のほとんど無い文章で、起承転結も特に無く、読みどころがイマイチ掴みにくいけど不思議と引き込まれる。言葉の波が皮膚を通して浸透してくるような。表題作「小島」他幾つかは良さが分からなかったけど、「ひよどり」「ねこねこ」は生死の曖昧な境界線上でゆらゆら揺さぶられる様な凄味がある。2024/03/01
きゃれら
16
書店で文庫の新刊平積み本を見ていたら「広島カープ3部作」と帯に書いてあり、今見逃すと一生読まないかもとも思って、手に取った。意識の流れ、とは少し違うかもしれないが、改行、段落が全くなく、これと言ったストーリー展開もなく、都市郊外の小さな生き物や植物の細かい描写やその気持ち悪さが迫ってくる短編の連続に面食らう。いつになったらカープが出てくるんだと辛抱して読み続けて、終わりから4本目の短編からがカープ3部作。傑作でした。広島出身の芥川賞作家とは買ってから知ったが、出身者でないとわからない機微が書かれていた。2023/12/07
しきぶ
8
著者の芥川賞受賞作である「穴」を読んだとき、主人公の五感を通した周囲の描写が秀逸で、その世界に入り込んで自分と作品の境目が分からなくなるという強烈な読書体験をしたのですが、本書でもそれはいかんなく発揮されていて、本から温度や匂いを感じるのではないかというほど。改行や句読点がなく、ときには主体が誰なのか分からなくなるような文章がつらつら続き、最初は読みにくさも感じたが、人の思考の中を漂っているような不思議な感覚を味わった。カープ3部作の独特の空気感は地元民にしか分からないのでは。そんな特別感にニヤニヤする。2023/12/12
流石全次郎
7
14作の短編集。樹木、野草、鳥、昆虫。物語にからんでくる生き物たちは何がという訳ではないけど不思議でここち良い。短編なのに読むのに結構時間のかかるなつかしい様な風景。2023/12/09
十文字
3
広島カープ3部作がよかった。最初、何を読まされてるのかと思った。2024/01/15