内容説明
「絶対に無理はしないでください」豪雨に見舞われた地区にボランティアとして赴いた〈私〉は、畑に流れこんだ泥を取り除く作業につく。その向こうでは、日よけ帽子をかぶった女性が花の世話をしていた。そこはまるで緑の小島のようで――。被災地支援で目にした光景を描いた表題作のほか、広島カープを題材にした3作など14編を収録。欧米各国で翻訳され、世界が注目する作家の最新作品集!(解説・藤野可織)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かぷち
73
カープの話と聞いてファンなら必読!と書店へGo。短編集で「異郷」「継承」「点点」が広島が舞台。栗原でおーっとなり、チェコで懐かしい〜。贔屓チームが負けると空気悪くなる感じ分かる、ほんとにギスギスするんだ。カープ以外の話は全体的に改行のほとんど無い文章で、起承転結も特に無く、読みどころがイマイチ掴みにくいけど不思議と引き込まれる。言葉の波が皮膚を通して浸透してくるような。表題作「小島」他幾つかは良さが分からなかったけど、「ひよどり」「ねこねこ」は生死の曖昧な境界線上でゆらゆら揺さぶられる様な凄味がある。2024/03/01
Shun
32
小山田浩子さんの作品集。14編収録でどれも日常の細やかな描写が特徴。14もの作品が収められていますが、ほとんど改行なしの文章で構成されているため一つ一つの作品を読んだ時の満足感はなかなか。そして主に自然的な要素、たとえば植物や小動物に昆虫類といった細やか、かつ重要な描写があればこそ小説の中の日常に深く入っていくことができる。またはっきりと主題が分かるような風でもなく淡々と丁寧な描写が続くようなところがとても文学作品だなぁという印象を受けました。2024/08/31
かさお
31
14の短編。濃密。サントリー割るだけボスラテみたい。ぎっしり日本語が詰まってて、会話でも改行が無く、じゅげむじゅげむごこうのすりきれ、、みたいな言葉の羅列。飲み物みたいに薄めるわけにもいかず、じゅげむの中に身を素直に委ねてみる。と、あら不思議。苦ではない。むしろ読める。なぜ?何て事はない日常の切り取りのように見えるのに。誰もがこの本の中に閉じ込められている。もちろん私も。だから気になる。小山田浩子、末恐ろしい。会いたくない。きっと私は見透かされる。人間が本来持っている野生が刺激される一冊。ああボタニカル2024/07/05
ATS
18
普段の日常を描いているようなものが大半なのであるが得も言われぬ不穏が底を流れている。人間への眼差しも悪意に染まっているような。滑稽さというか上澄みで生きている人間を目の当たりにさせられて自分もこんな薄っぺらい人間なのかなぁと少し厭世的になる。筆者の文章は緻密というか非常に繊細というか流れを掬っているような感じが強い。私たちは流れの中に否応なく生きていてほぼ惰性に身を任せている。周囲に意識を向けることが少ない。無意識的な生活を丁寧に掬い取りそこに少しブラックさを加えている。それが非常に上手いなぁと思う。2024/09/21
きゃれら
17
書店で文庫の新刊平積み本を見ていたら「広島カープ3部作」と帯に書いてあり、今見逃すと一生読まないかもとも思って、手に取った。意識の流れ、とは少し違うかもしれないが、改行、段落が全くなく、これと言ったストーリー展開もなく、都市郊外の小さな生き物や植物の細かい描写やその気持ち悪さが迫ってくる短編の連続に面食らう。いつになったらカープが出てくるんだと辛抱して読み続けて、終わりから4本目の短編からがカープ3部作。傑作でした。広島出身の芥川賞作家とは買ってから知ったが、出身者でないとわからない機微が書かれていた。2023/12/07