内容説明
人々は地震リスクに目を背けているように見える。しかしほんのわずか人々にナッジする(働きかける)と、人々は瞬く間に地震リスクに真正面から向き合うようになる。本書は、こうした人間行動の機微を踏まえた緩やかな介入主義の考え方を住宅政策や防災政策に適用するとともに、行動経済学の研究手法をそれらの政策研究に応用する。
目次
謝辞
序章 住宅ストックの地震リスクマネジメント:等身大の人間行動を考えた制度設計に向けて[齊藤誠・中川雅之]
1.はじめに
2.“緩やかな介入主義”とは?
3.ナッジ(nudge)をすれば……
4.なぜ,規制基準ぎりぎりの住宅ばかりになるのか
5.規制強化の不幸な帰結
6.消費者自らがより高い耐震基準を選択する仕掛け
7.室内の梁の突出感が気になる人,気にならない人
8.自然災害リスクの程度を映し出す鏡としての地価
9.コンテクストに左右される地震保険選択
10.マンションを守るうえでのマンション管理組合の重要性
11.大地震と子供たちの人的資本形成
12.おわりに:当事者のインセンティブを高める仕組みづくり
第1章 建築基準審査厳格化の帰結:建築士労働市場を中心に[神林龍・川口大司・村尾徹士]
1.はじめに
2.日本の建築士
3.建築基準法改正の影響
4.おわりに
参考文献
第2章 地域危険度の変化が地価水準に及ぼす非対称的な影響:東京都のケース[顧濤・中川雅之・齊藤誠・山鹿久木]
1.はじめに
2.地域危険度とその変化
3.データと推定モデル
4.推計結果の頑健性
5.おわりに
付録:非対称性が生じる理論的背景
参考文献
第3章 活断層リスクの社会的認知と活断層帯周辺の地価形成の関係:上町断層帯のケース[顧濤・中川雅之・齊藤誠・山鹿久木]
1.はじめに
2.上町断層帯の地震リスク評価と活断層に対する関心の変化
3.推計モデルと推計結果
4.おわりに
参考文献
第4章 浸水危険度公表が地価に与える影響:新川,境川,日光川流域のケース[齊藤誠・中川雅之・山鹿久木]
1.はじめに
2.分析の理論モデルと実証モデルの特徴
3.データ
4.推計モデルと推計結果
5.係数の時系列変化
6.おわりに
参考文献
第5章 地震保険加入行動におけるコンテクスト効果[佐藤主光・齊藤誠]
1.はじめに
2.日本の地震保険制度
3.2008年に実施した地震保険に関する消費者意識調査
4.2009年に実施したアンケート調査について
5.2009年アンケートの推計結果
6.おわりに
参考文献
第6章 家計向け地震保険加入率・付帯率の決定メカニズム:東京都のケース[齊藤誠・顧濤]
1.はじめに
2.地震保険世帯加入率・付帯率の決定要因
3.分析結果のまとめ
参考文献
第7章 プロスペクト理論とマンションの耐震性能の選択[中川雅之・齊藤誠]
1.はじめに
2.耐震性能の選択とプロスペクト理論
3.データ
4.耐震性能に関する選好
5.建替え計画の選択
6.選択者の選好の影響
7.おわりに
参考文献
第8章 耐震マンションを好む人はどこを見ているか:アイトラッカーを用いた研究[齊藤誠・竹内幹]
1.はじめに
2.普及しない耐震マンション
3.調査の概要
4.おわりに
付録
A.1 実験開始時に提示される文章
A.2 アンケート内容
A.3 資料「分譲価格について」
A.4 耐震性評価額の質問
参考文献
第8章補論 アイトラッキングの可能性[竹内幹]
1.眼球運動(eye movement)
2.注意と眼球運動の関係
3.意思決定と眼球運動
4.経済学における意義
参考文献
ほか