内容説明
うじゃうじゃと蠢く虫の群れ、おぞましいほど密集したブツブツの集合体、刺されば激痛が走りそうな尖端、高所や閉所、人形、ピエロ、屍体――。なぜ人は「それ」に恐怖を感じるのか。人間心理の根源的な謎に、精神科医・作家ととして活躍する著者が迫る。恐怖に駆られている間、なぜ時間が止まったように感じるのか。グロテスクな描写から目が離せなくなる理由とは。死の恐怖をいかに克服するか等々、「得体の知れない何か」の正体に肉薄する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
131
恐怖についての論考でかなり楽しく読ませてもらいました。恐怖といっても一概にはかたずけられず様々な感じがあることがよくわかります。この筆者も甲殻類恐怖症のようですが、私はそんなに感じたことがありません。わたしは高所恐怖症と閉所恐怖症はかなりあり、飛行機などはだめです。そのような分析をわかりやすく楽しい例を引きながら分析されていてここに紹介されている本などを読んでみたいと思いました。2023/11/15
Kanonlicht
102
著者は精神科医だけど、恐怖が発生するメカニズムを学術的に解説するというよりは、自身の経験に基づく恐怖の類型紹介といった感じ。高所恐怖症の要因が「自分を信用できない」という説には諸手を挙げて賛成する。著者のいう恐怖の要素のひとつに「不条理感」があり、やっぱり人間って自分の理解の及ばないものに恐怖を感じるものなんだと納得。その最たるものが「死」なんだろうな。あと精神科医ですらこんなにたくさん怖いものがあるんだと少しほっとした(笑)2023/10/21
かずぼう
93
色々な恐怖症がある、著者は甲殻類恐怖症とか。甲殻類旨いじゃん。集合体恐怖(虫の卵とか)人形恐怖(日本人形はちょっとね)個々に説明されると確かに不気味で怖いかも。私は、蛾が大嫌い。でも例外がある、小学校の頃、教室でカイコを飼うことになり、みんなで餌の葉を取りに行ったりして、可愛がった、カイコの幼虫を手の上で這わせたりも平気。2023/11/10
HANA
78
精神科医の著者が恐怖について語った一冊。ラヴクラフトの名言を引くまでもなく、古来様々な文人が恐怖について語ってきた。ただ恐怖は主観的なものだから、その本質について語れた人はいないように感じる。恐怖を定義…しようとすると不可能に近いので、それに迫ろうとすると本書のようなエッセイ調になるのは仕方ないのではないか。精神科医らしく様々な恐怖症から始まり、文学や映画から恐怖に関連する部分を抜き出し分析する様は、まるで舞台の手品師に幻惑され魅了されるよう。エッセイとしての魅力と共に最上の恐怖ガイドでもありました。2023/12/01
みこ
74
精神科医が語る恐怖の正体。なので、脳科学的なものと思ったが、小説や映画などを引き合いに心理学的なアプローチをした一冊。「恐怖」「未知」「不可逆」というキーワードが分かりやすい。丁度先週スパイファミリーで黄昏さんが「正体の知らないものが恐れを抱かせる」と言ってた。だからといって私の虫嫌いが解消されるわけでもないが。2023/11/26