内容説明
その怪物が日本を変える。「スサノオ」と呼ばれたカリスマ政治家がテロに遭った。その伝記を制作する芸術家(アーティスト)は、一つの「恋愛」の行方を追って、黄泉の世界へ潜っていく――。〈異形の伝記〉が完成するとき、現代日本の運命が変わる!ポピュリズムの時代に新たな神話を降臨させる、怪物的長篇1001枚。
エックスデーからの30年、この国は何を失ったのか?バブル崩壊後に政界入りし、美貌と弁舌で支持を集めた二世政治家・大沢光延は、将来の首相と目されながらテロリストの兇刃にかかる。彼の生涯を伝説化しようとする芸術家・河原真古登が、出発点に見出したのは、一人の巫女との「運命の恋」だった--。
昭和の終焉からコロナ下の令和、幕末日本へ。芸術家からテロリスト、野生の巫女へ。スイングする「語り」が生み出す、予測不能の展開! アニメ版「平家物語」の原作者が、この時代〈の、すべて〉に挑む長篇絵巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
68
今描いてるいる時をしつこく確認するような文面。年代や社会的事象は事実だが、ここで描かれているスサノオという政治家及び政治的活動はフィクションだ。その政治家の伝記を書いているのはアーティストという設定が実に興味深い。政治とテロと宗教と歴史と芸術がシャッフルされ、愛の物語となっている。つい最近耳にした美術評論家・宮川惇の「芸術家は決して自然に汲むものでも、無から創造するのでもなく、つねに芸術という一冊の本を読んでいる、つまり書いている」という文が浮かんできた。2023/11/08
ぐうぐう
31
ここには、政治と宗教と芸術と、そして恋愛が描かれている。何より、時代そのものが描かれている。この場合の時代とは、過去のことだけではない。渦中であり、あるいは未来でもある。『の、すべて』と題された小説は、だから嘘ではない。ある人物の伝記として現れる小説の、その語り手がアーティストであるのだが、それが一筋縄ではいかない。人称を変えながら(つまり主体と客体とを入れ替えながら)、伝記は進んでいく。しかし、この複雑さは読者への挑発ではなく、誠実であろうとする結果だ。(つづく)2024/02/27
harumi
5
初めての古川日出男さん。分厚くて、癖の強い独特の文章なので返却日までに読み終わるのが大変でした。登場人物が全員この難解な会話で意志疎通できているのがすごい。私にはついていけませんでした。ストーリーだけを追うと純愛小説、許されざる恋、のように思えます。そこに宗教と政治と芸術が絡むのですが、中心は芸術でした。2024/01/29
ユウスケ
4
今更ながら「あるいは修羅の十億年」あたりから古川先生はかなり作風が変わったと思う。その前まではソリッドな感じでしたが宗教など神秘性のあるものをテーマのひとつとすることが増え、いくつかのキーワード、物象から物語を広げていく感じ。心象風景を見ているようで抽象度が高く掴みづらいところはあるのですが、逆に読書のペースを制御されているのが心地いい感もありますし、奥の深さに到達したく感じる。この作品でひとつの到達点に達した印象もありますね。2025/04/02
メセニ
4
9/10。"一日にぶらんこを十分間"2024/06/28
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